003 渋谷 寛 2022-09-22
弁護士・司法書士/ウイスキー文化研究所代表世話人/英国王立写真協会会員
消費者目線での審査を心がけ、スピリッツを飲む楽しさを伝えたい
「審査員としての経験を積むことで、初めに香りをとり、ストレートで味の確認、加水して香りと味の変化を見て、最後に上位を見極めていく、という流れが確立されてきました。リモート審査は3回目となり、休日の夕方と時間帯を決め、1日1フライトのペースで、1ヵ月かけて無理なくできました。テイスティングコメントのフィードバックがパソコンでできるようになったのも、負担が減り助かっています。
焼酎やジンなど幅広いアイテムを担当するので、普段から、幅広い分野で気軽に買える商品を積極的に飲むようにしています。一般的な消費者の目線を踏まえた上で、出品ボトルを評価するように心がけています」
「最高金賞の本数など、妥当な結果だと思います。メーカー側が売れて欲しい商品ではなく、飲んで楽しい商品が上位に来ているなという印象ですね。
ただ、ピート系を飲むことによってスコッチウイスキーにハマる人もいるのに、ピート系が上位に来ていないのは残念です。フライトの後半にピート系が組み込まれており、比較すると、長熟のスコッチや、バランスの素晴らしいブレンデッドに埋もれてしまう。ピート部門を設けるかは検討しても良いと思います。
回を重ねるごとに特別賞も充実してきて、来年はどこが受賞するのか?と注目されるようになると良いと思います」
「とにかく、出品数が増えて欲しいです。スコッチウイスキーの伝統的な銘柄が、まだ出揃っていないと感じます。
クラフト蒸留所の中には、10年ものなどの定番商品を発売できるようになるまで出品は控えているという企業もありますが、審査員のテイスティングコメントのフィードバックもあるので、製品造りに活かすためにも、ぜひ出品して欲しいです。業界関係者向けの試飲会などもありますが、悪かった点は伝えづらいものです。
また、オフィシャルガイドブックも、新しい情報がたくさん載っていて充実しているので、もっと多くの方に手に取ってもらえたらと思います。
TWSC2019の会場審査では、ゲストの方が審査を体験できるという試みがありました。その時は審査員以外の方に、ブラインドでの審査の難しさを体験してもらえ、盛り上がりました。コロナ禍により会場審査が中止となってしまいましたが、そういった試みも、今後再開できるようになる日が来るのを願っています」
文=馬越ありさ
PROFILE
1997年渋谷総合法律事務所創設。ペット法学会会員・常任理事を務め、ヨーロッパやアジア各国の海外の司法制度を視察。法律関係の著書を多数監修・執筆する傍ら、『ウイスキーガロア』、「シングルモルトウィスキー大全」(土屋守著/小学館)、「日本ウイスキー世界一への道」(嶋谷幸雄・輿水精一著/集英社新書)など多数のウイスキー関連書籍に写真提供を行う。