• TWSC実行委員
    • 洋酒・焼酎審査員

    002 早川 健 2022-09-21

    ウイスキー文化研究所特別技術顧問/元キリン・シーグラム富士御殿場蒸溜所チーフブレンダー

    審査員の官能評価レベルを向上させ、さらに発展したコンペティションに

    キリン・シーグラムの富士御殿場蒸溜所チーフブレンダーとして活躍した経験を持つ早川健さんは、近年ではウイスキー文化研究所の特別技術顧問として、クラフト蒸留所の立上げのコンサルティングも行う。TWSCには、初回の2019年から実行委員・審査員として参加している。
    ――― 2022年の一次審査の感想をお聞かせください。

    「洋酒部門では、ジャパニーズウイスキーのニューメイク、シングルモルト及びアイリッシュウイスキーのブレンデッド、焼酎部門では、甕・タンク貯蔵の芋焼酎と黒糖焼酎及び樽貯蔵の麦焼酎を審査しました。公平で正確な審査を実施できたと思います。事前のオリエンテーション動画とサンプルによる基準点数の提示は非常に有効だと感じました。
    審査方法については、会場で審査を行ったほうが人々の話題になったり、審査員のモチベーションアップ、審査後の意見交換による審査能力の向上といった面で望ましいと思いますが、新型コロナ対策でやむを得ず始めたリモート審査も、より集中できる環境で落ち着いて審査できるという大きなメリットがあるので、当面はこのままで良いのではないでしょうか。
    1サンプルあたりの審査員の数が、最低でも洋酒で12人、焼酎で10人というのも、良い基準だと思います」

    ――― 2022年の受賞結果についてはどう思われますか?

    「妥当な結果だと思います。洋酒部門では、最高金賞を受賞したウイスキー13品中、ジャパニーズウイスキーは4品であり、そのうちクラフト蒸留所が2品と健闘しているのは非常に喜ばしい。特に、「嘉之助2021ファーストエディション」は短期間での受賞で、特筆すべき快挙です。また、ジャパニーズジンの「ROKU(六)」と「サクラオ ジン オリジナル」の最高金賞も素晴らしい。
    焼酎部門では、度数の高いもの、樽熟成したもの、原料的には黒糖がやはり強いという感じで、洋酒に親和性のある審査員ならではの傾向が出ています。ベスト・オブ・ザ・ベストやカテゴリーウィナーを度数で分けたことは正解だったと思います。
    個人的には、最近起業した日本のクラフト蒸留所のニューメイク7品は、ほぼ高水準な品質で大きな欠点はなく、今後の熟成が非常に楽しみです。特に、ニューメイクの場合、出品者のために製造方法に起因する気になった点をコメントするようにしているので、新たに参入するクラフト蒸留所は積極的に出品し、フィードバックを参考にして欲しいと思います。
    出品点数中の受賞点数が多いという点については、絶対評価によって良いものは良いと評価した結果だと感じています」

    ――― TWSC2023に向けて、課題があるとしたら、どういった部分でしょうか?

    「実施方法については、基本的にこれまでのやり方を踏襲する形で問題ないですが、授賞式は大々的に会場を借りて実施できれば、話題性が増すので好ましいと思います。
    課題としては2つ。1つ目は出品点数の増加です。第5回の区切りとして、話題性を提供できると良いですね。例えば、ジャパニーズウイスキー100周年記念イベントと連動して、ジャパニーズウイスキー部門のみで100周年記念の特別賞を設定したり。また、新規クラフト蒸留所や新規輸入する酒輸入販売会社にはぜひ出品して欲しいです。
    2つ目は審査の信頼性向上です。審査員の官能評価レベルの維持、向上は、コンペティションの発展に不可欠です。例えば、出品酒とは無関係にメルクマールになる商品を設定し、候補となる審査員にリモート審査を依頼して、その結果からレベルを判断する方法もあります。審査員を育成するシステムを構築できたら良いですね」

    文=馬越ありさ

    早川 健

    PROFILE

    1959年広島県福山市生まれ。大阪大学工学部醗酵工学科、大学院で醸造・醗酵を学び、1983年にキリン・シーグラム株式会社に入社。2000年に富士御殿場蒸溜所のブレンド最高責任者となり、「富士山麓樽熟50°」「富士山麓シングルモルト 18年」等の開発を手がける。また御殿場工場におけるジン・ウォッカ・ラム・焼酎製品の製造にも携わる。2015年麒麟麦酒を退職し、ウイスキー文化研究所の特別技術顧問に就任。

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