• TWSC実行委員
    • 洋酒・焼酎審査員

    006 林 生馬 2022-10-03

    日本テキーラ協会会長/日本メスカル協会顧問

    TWSCを通じ、日本におけるアガベスピリッツの普及に期待したい

    林生馬さんは、カリフォルニア州立大学で映画製作を学び、20世紀フォックスに入社。ショーン・コネリーやジョージ・クルーニーとテキーラを飲み交わし、テキーラに魅了される。帰国後、日本テキーラ協会を設立。ブリュッセル国際コンクールなど、世界的な酒類コンペティションでの審査員の経験を持ち、TWSCには初回の2019年から実行委員・審査員として参加している。
    ――― 2022年より、テキーラ部門からアガベスピリッツ部門へとカテゴリー名を変更しました。初回開催から2022年の第4回まで、審査を通じて経年での変化をどのように捉えていらっしゃいますか。

    「日本ではアガベスピリッツといえばテキーラのイメージが強かったですが、メスカルやソトル※も増えてきたので、アガベスピリッツにカテゴリー名を変更しました。年々、アガベスピリッツへの理解が深まり、審査の精度が上がっていると思います。
    TWSCが始まった当初は樽熟成したものが強い傾向が顕著でしたが、焼酎の審査も始まり、樽熟成していないもの、いわゆるホワイトスピリッツに対しての評価の方向性が定まってきたように感じます。一般的に、アガベは成熟するまでに最低5年はかかる貴重な原材料です。樽由来の風味に引っ張られず、アガベ由来のミルキーでクリーミーな風味が評価されるようになったのは嬉しいですね。
    また、初期の頃は、個人の好みでの評価が散見されましたが、審査員の多くがスピリッツとしての良し悪しで評価できるようになっているなと感じます」

    ※メキシコ北部で生産される、アガベに近いキジカクシ科のダシリリオンを原料とした蒸留酒。

    ――― 2022年の受賞結果についてお聞かせください。

    「TWSCの受賞結果は、一般の消費者のトレンドと離れすぎない程度に、マスマーケットを先取りしていると思います。メスカルはまだ日本市場では馴染みが薄いですが、きちんと評価されている。マスマーケットのリーダーが選んだスピリッツという意味で価値があり、これからアガベスピリッツを飲みたい、という方に参考になる結果だと思います」

    ――― 世界のコンペと比べて、TWSCの特徴や強みとは何でしょうか?

    「TWSCの審査員はバーテンダーが多いですが、世界的にみて、とても勉強熱心です。海外のバーテンダーはパフォーマンスに力を入れている印象ですが、日本人のバーテンダーは様々なお酒に対する知識が豊富です。それが審査の精度の高さに繋がっていると思います。コンペティションのオペレーションも、世界と比べて遜色ないので、続けることが大切です。国内で認知されるには5年、世界で認知されるには10年はかかると思っています。
    世界のアガベスピリッツの中で、日本で手に入るものは半分もありません。TWSCの知名度が高まり、日本に輸入されるアガベスピリッツの種類が増えることを望んでいます。また、日本でもアガベを育て始めていて、日本産のアガベスピリッツも数年後には出てくるでしょう。その頃には、TWSCを通じ、日本のアガベスピリッツ市場がより成熟していると良いですね」

    文=馬越ありさ

    林 生馬

    PROFILE

    1968年東京生まれ。カリフォルニア州立大学にて映画製作を学び、20世紀フォックス社で製作スタッフとして活躍。ショーン・コネリーやジョージ・クルーニー、北野武監督らとテキーラを酌み交わす経験から、テキーラブームの到来を体感。訪れたテキーラ蒸留所は100以上。2008年7月「日本テキーラ協会」を創立。日本メスカル協会顧問。著書に「テキーラ大鑑」(廣済堂出版)がある。

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