016 佐々木 太一 2022-11-24
サントリー株式会社 スピリッツカンパニー ウイスキー事業部 シニアスペシャリスト/ウイスキーアンバサダー/マスター・オブ・ウイスキー
次の100年に向けて、各社協力して日本のウイスキーを盛り上げていけたら
審査会場ではなく、会議室にこもって1人で審査をするのはかなり難しかったです。
会場審査では限られた空間で、審査員複数名が1つのテーブルに着いてテイスティングを行うので、お互いの表情やリアクションを見たりすることもできますし、時間も限られているので、試験のような緊張感を持ってやることができます。
一方、リモートで審査をするとなると、集中できるという声もあるようですが、電話やメールなど集中を妨げる状況が起こりえますし、やりづらさがありました。
2023年もリモート審査となるようですが、会場審査がなかなかできない中で、どうしたら集中できる環境をつくることができるかを考えなくてはならないですね。
心掛けているのは、わかりやすい表現にすることです。アロマについて、特殊なものの香りに例えたところで一般の人には伝わりません。コメントは出品者にフィードバックされていますが、出品企業を意識して、というよりは、一般の人が読んで分かりやすく、しっかりと伝わるように考えて書いています。
当社が受賞した内容については、大変ありがたく光栄なことだと思っています。ブラインド審査でも、いいものを出せばきちんと評価していただけるということがわかりました。
またTWSCが面白いのは日本人が評価しているということです。我々のウイスキーの根っこには、「日本において、日本人の味覚に合うウイスキーを造り始めた」ということがあります。今は世界品質を狙っていますが、TWSCの日本の審査員にブラインドで認められたということは非常に光栄ですし、特にROKU(六)が最高金賞を受賞したのはとても嬉しいですね。日本のボタニカルを使って世界に発信している商品が、まずは日本で認められたことなので。
若い熟成年数のウイスキーが、長熟のモルトとどう比較されるかという点に注目しています。私自身、パンチの効いた若い原酒が好きなんです。白州で言うと、個人的に18年より12年が好みだったりもしますし。また今後、若い熟成年数のものがブレンドされた商品も増えていくと思うのですが、そうなった時に、長熟のものと比較してどっちがいい、というものではないとも思うんです。どれくらい熟成させればバランスがとれていくのか、これまでは7~8年で若いと言われていたのが、4年ぐらいのものをブレンドした時にどうなるのか。注目しています。
きっと樽熟成の技術だけでなく製造にもポイントがあり、若くても品質が担保できるような原酒の造り方をしているんだと思います。そういう意味でもクラフトの人たちに注目しています。
今や何十という蒸留所がウイスキーを造りはじめています。過去には、80年代半ばからウイスキーの需要が落ち、低迷の時代が続きましたが、今これだけの蒸留所ができていて、その時と同じことが起こったら業界全体が大変なことになります。ウイスキーに携わっている人たちが情報交換をして、次の100年に向けてやっていかなくてはならないと感じています。ウイスキーは先輩たちが造ったものを後輩に受け継いでいくというビジネスなので、業界全体が20年~30年というスパンで物事を見ていく必要があります。今、目の前のことだけを追っていてはいけないですね。我々も帯を締め直してやっていかなくてはいけないと感じます。
我々だけが声を上げても、例えば番長が「行くぞ!」と言っても誰もついてこないということがありますから(笑)、スマートな新入生や中堅どころが「そうじゃないですよ。我々がやりたいのはこういうことなんですよ!」と意見するような、そういうことも必要だと思います。2023年は日本のウイスキー生誕100年ということもあり、我々もいろいろなところでいろいろな仕掛けをする予定です。各社協力して、一緒に日本のウイスキーを盛り上げていけたらと思います。
文=TWSC事務局
PROFILE
1971年神奈川県生まれ。バレーボール日本代表として活躍し、引退後は所属していたサントリーで社業に専念。現在、サントリー株式会社 スピリッツカンパニー ウイスキー事業部 シニアスペシャリストのウイスキーアンバサダー。