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2019/12/04
TWSC実行委員のつぶやき~能勢 剛 委員~
──TWSC実行委員 能勢 剛 氏
プロフィール
日本経済新聞社のシンクタンク、日本消費経済研究所(当時)のマーケティング理論誌「消費と流通」編集部を経て、1988年より日経ホーム出版社(後に日経BP社)で、一貫してライフスタイル誌の編集を担当。『日経トレンディ』編集長、『日経おとなのOFF』編集長などを経て、2016年に独立。メディアプランニング・コンテ ンツ制作の株式会社コンセプトブルーを主宰。日経トレンディ時代の特集「ヨーロッパのホテルランキング」では、土屋守とともに、ヨーロッパの主要ホテル55軒のバーを覆面取材した。
第1回目のTWSC。
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審査会当日が終わり、後日、結果が発表されるまでの舞台裏で、
このコンペティションの意義を象徴するような光景がありました。
事務局が全審査員の採点シートを集計してみると、
「えっ、ホントなの!?」
と目を疑うような結果がいくつも現れてきたのです。
同じ銘柄のウイスキーなのに、
ラインナップ中の最も安いボトルが、
最も高いボトルを得点で上回る。
審査員の誰も知らないような
海外のクラフトジンやクラフトバーボンが、
そのジャンルでの最高点を叩き出す。
同じ銘柄のウイスキー、
それも日本のクラフト蒸溜所のものが
2本同時に最高得点圏に入る、等々。
どこかで、なにかの手違いがあったのかも、
と、改めて実行委員会で、
確認のテイスティングをしてみたところ、
結果は、ことごとく審査員の採点通り。
手違いでなかったことに安堵するとともに、
酒の世界で活躍するプロたちの、鼻、舌、
そして目の確かさに感嘆させられました。
同時に、
もし、ブラインドテイスティングでなかったならば、
さまざまな事前の情報や先入観に惑わされて、
こうしたスキルの高いプロたちですら、
同じ結果にはたどり着けなかったのではないか、
と強く思わされた瞬間でした。
公平で透明性のある審査こそが、
普段は隠れて見えにくい真実を
私たちの前に浮かび上がらせてくれます。
以下は、TWSC実行委員会の意見ではなく、
まったくの個人的な見解なのですが、
いまの<食>をめぐる情報は、
あまりにも多くが氾濫しすぎているし、
あまりにも無責任な情報が大半を占めている、
と感じています。
テレビ、書籍・雑誌などのオールドメディア、
ネットなどの新しいメディアを問わず、
その状況はどれも同じ。
テレビでは、朝から深夜まで、
あらゆる<食>を画面で紹介しながら、
芸能人たちが大げさに
その美味しさに驚いて見せます。
雑誌やWebメディアにも <食>の情報はあふれていますが、
食べていないのに記事にすることがしばしば。
媒体によっては、
掲載料をもらって編集記事にする、
なんていうことも横行しています。
不特定多数のユーザーが
匿名で採点するレストラン評価サイト等にいたっては、
悪意に満ちた評価や、
クレーマーとおぼしき人々の書き込みが、
当たり前のように見受けられます。
匿名ですから、
グルメ評論家風の書き込みをしている人物が、
実はファストフード好きの中学生だった、
なんてことだってあり得るでしょう。
もちろん、きちんとした評価を売り物にした
コンテンツだって少なからずあります。
しかし、あの有名なレストラン評価本でさえ、
評価者のスキルや評価方法を明らかにしていません。
少なくとも<食>を評価するにあたっては──
・どんなスキルを持った人が
・どんなものを対象に
・どんな方法で評価したのか
を明らかにし、評価の根拠を示すのが、
公平で透明性のあるやり方でしょう。
それは、日々、<食>と向き合い、
精魂傾けて<食>を生み出してくれている
生産者や料理人の方々への礼儀でもあります。
生産者に敬意を持って
公正で透明性ある審査を行う──
愚直なまでのTWSCのスタンスが、
対象ジャンルに焼酎も加えた2年目で、
どんな予想外の結果を見せてくれるのか。
開けてくれるであろう風穴の大きさを
今から楽しみにしているのです。
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