007 海老沢 忍 2022-10-06
日本ラム協会会長/株式会社SCREW代表取締役社長
日本のクラフト蒸留所発! ジャパニーズラムの出品が楽しみ
「リモート審査は集中できて良いと、改めて思いました。焼酎の審査も担当していますが、2020年の初回は、洋酒に慣れているせいで、度数の低い焼酎からフレーバーを拾うのに苦労しました。リモート審査も3回目となり、自分のペースでお酒に向き合うことによって、25度以下のトラディショナルな焼酎も、きちんと評価できるようになりました。
また、2021年からテイスティングコメントを書くようになりましたが、どんな所が良かったか、物足りなかったかを書くことにより、自分の審査を見直すことができるようになったのも良いと思います」
「ラムの結果に関しても、審査員間での点数のバラつきが減り、精度が上がったと思います。
課題としては、ホワイトラム、ゴールドラム、ダークラムには熟成年数の違いによる個性がありますが、ダークラムの長期熟成が評価されがちな傾向があることです。現在、審査基準のオリエンテーション動画でイギリス系のダークラムを基準に用いていますが、ホワイトラム、ゴールドラム、それぞれの基準を紹介するのも良いかもしれません」
「「ロン サカパ XO」「ラムネイション パナマ 21年」のような口当たりが滑らかで、甘いだけでなく味に奥行きのあるスペイン系のラムも、「アプルトン エステート 21年」のような重厚感がある骨太な酒質で、トロピカルフルーツのような濃厚な香りが特徴のイギリス系ラム も最高金賞を受賞しており、審査員の好みではなく、個性が異なるものの中からおいしいものをきちんと評価できていると思います。スペイン系のラムは、シェリー酒に見られるソレラシステムを用いて熟成をしている蒸留所が多く、イギリス系のラムはスコッチウイスキーのブレンド技術を踏襲しているのが特徴です。製法が違うので酒質と風味も異なりますが、多様なラムのおいしさが評価されているのは、審査の精度が上がった結果だと感じます」
「国産ラムの出品に期待しています。総合酒類メーカーの造る国産ラムはスッキリとした飲みやすいラムが多かったですが、クラフト蒸留所ができて、しっかりした酒質で蒸留所ごとの個性が感じられるラムが出てきました。ジャパニーズウイスキーのように、長い時間をかけて、ジャパニーズラムというカテゴリーが育っていくことを期待しており、TWSCがその一助になると良いですね。
世界的に見ると、洋酒のマーケットは欧州と北米が二大巨塔で、アジアはその次です。アジアの中で見ると、日本は先進的なマーケットではあるので、TWSCを続けていくことにより、日本のスピリッツのマーケットが成熟していけば良いと思います」
文=馬越ありさ
PROFILE
1970年東京都出身。日本におけるラム酒のパイオニアとして知られ、1997年開いた自らのバー、「SCREW DRIVER」は常時500種類以上のラムを取り揃え、国内随一のラインナップ数を誇る。世界各国の蒸留所を視察し、個人で所有するビンテージラムは5,000本以上。2008年「日本ラム協会」を設立。また外で飲むお酒の美味しさを伝えるために、フェスやキャンプイベント等でのOUTSIDE BARも展開している。