013 白根 全 2022-10-28
カーニバル評論家/ラテン系写真家
「本屋大賞」のように、消費者に寄り添うコンペティションに
「回を重ねるごとに審査全体の精度が上がり、かつ安定してきている印象を受けます。2022年の受賞結果は審査員各々の主観と客観のバランスが取れた採点で、絶対評価と相対評価、両方向からも高いレベルに到達し、よりメーカーと消費者を繋げる結果になっているのではないでしょうか。
本の世界では、芥川賞や直木賞とは異なる存在として、本屋大賞がすっかり定着しました。プロの作家や評論家の目線から離れて、書店員がどうしても読んでもらいたい一冊を推す現場感覚が大きいのでしょう。酒屋で定番商品をリピートしがちだったり、バーで知らないお酒を勧められてもハードルが高いという人が、TWSCの受賞結果を参考に新しいお酒に出会ってもらえると嬉しいですね」
「まず第一に出品アイテム数を増やすことと、外部に向けた情報の拡散を期待しています。PRも兼ねて、一般の方にも何らかの形で審査に参加したり、審査の様子を見てもらえるような仕掛けがあれば楽しいと思います。単に酔うためにスピリッツを飲むのではなく、探求するつもりでテイスティングしてみると、今までとは違う味わい方が楽しめるはずです。
また、ベスト・コストパフォーマンス賞やバーテンダー賞のように、メーカー側が自社製品に自信を持てたり、消費者が飲んでみたいと思うような特別賞が、もっと充実すると良いと思います。テイスティング結果を点数順に並べて、上から受賞していくだけではもったいないと感じます」
「南米に行くたびに、ペルーのピスコやチリ・アルゼンチンのワインの新しいメーカーや製品の出現には驚かされます。栽培されているブドウの種類も増え、この10年間のレベルアップには、目を見張るものがあります。これは、「世界のベストレストラン50」に2022年はペルーから3軒がランクインするなど、世界的にペルー料理が高く評価されていることも一因です。料理とのマリアージュで、地酒の品質が向上し、世界に広まっているのでしょう。
現地ではラムやテキーラ、ジンなども質量種類ともに拡大していますが、こうした状況は日本には伝わりにくい。逆に世界からみた焼酎の位置付けを客観視するところから、焼酎普及のヒントが探れるのではないでしょうか。焼酎は他のスピリッツとは異なり、「食中酒として飲む」ということも、世界ではまだ知られていません。料理とのマリアージュで、飲み方から提案していくというのも一案だと思います。TWSCが、焼酎が地酒から世界へ羽ばたく指針になれば良いと思います」
文=馬越ありさ
PROFILE
1954年東京生まれ。日本で唯一、世界中でも2人しかいないカーニバル評論家、ラテン系写真家。ラテンアメリカを中心に40年以上、世界の辺境6大陸150 ヵ国超を訪ね歩いてきた。探検・冒険など先鋭的行動者のネットワーク「地平線会議」同人。国際カーニバル評議会ボードメンバー。『ウイスキーガロア』で旅のコラムを連載。著書に『カーニバルの誘惑―ラテンアメリカ祝祭紀行』など。