012 能勢 剛 2022-10-25
編集者/株式会社コンセプトブルー代表
消費者との接点を増やし、TWSCの受賞結果が消費につながることを期待
「TWSCを4回開催するなかで、ウイスキーに対する固定概念が変わってきたと感じています。TWSCを始めた頃は、涼しいところで長期熟成された本場のスコッチウイスキーこそおいしいと信じていたと思いますが、ブラインドテイスティングの審査により、カバランのような暑い地域の熟成年数の短いウイスキーでも、おいしいという発見があった。そこに、3年熟成の「嘉之助2021ファーストエディション」が最高金賞に入り、暑いところの熟成年数の短いウイスキーにも多様性が出てきました。
「ジョニーウォーカー ブラックラベル12年」が最高金賞に入ってきたのも驚きでした。最近、バーで飲む機会がありましたが、昔、飲んでいたジョニ黒よりも、断然おいしく感じました。これは、チーフブレンダーが変わったことも影響しているそうです。値段やブランド、熟成年数という先入観のない審査によって、ウイスキーを再発見できるのがTWSCなのかもしれません」
「カクテルに使われることが多かったジンが、水割りやソーダ割りとして、ジンそのものを味わうという新しい飲み方が浸透してきたことに注目しています。クラフトジンが増えたのと、大手酒造メーカーが積極的にキャンペーンを行ったことで、マーケットとして育ってきた。それに合わせて、TWSCに2022年から「ジャパニーズジン」という新しいカテゴリーができたのは良いことだと思います。フレーバーがはっきりしたロンドンドライジンとは違い、バランスの良さがジャパニーズジンの特徴なので、その中で切磋琢磨することで品質が向上するのを期待しています。
ラムやテキーラ、焼酎も、こういった形で新しい飲み方が浸透すれば、市場が拡大する可能性は大いにあると思っています」
「スキルの高い審査員が洋酒は222人、焼酎は83人集まり、好みではなく絶対評価をしている審査結果なので、とても価値があると思いますが、それが消費者まで伝わっていないのがもったいない。点数だけでなく、テイスティングコメントを消費者にも分かりやすい言葉にして、開示していって欲しい。審査員が印象に残ったボトルについて語ったりしても面白いのではないでしょうか。酒販店の店頭にTWSC受賞ブースを作ってもらうなど、様々な形で消費者と接点を増やすことが大切です。消費者がお酒を選ぶ際に、TWSCの結果を参考にしてもらえるようになるのを期待しています」
文=馬越ありさ
PROFILE
日本経済新聞社のシンクタンク、日本消費経済研究所(当時)のマーケティング理論誌『消費と流通』編集部を経て、1988年より日経ホーム出版社(現・日経BP社)で、一貫してライフスタイル誌の編集を担当。『日経トレンディ』編集長、『日経おとなのOFF』編集長などを経て、2016年独立。メディアプランニング・コンテンツ制作の株式会社コンセプトブルーを主宰。