011 本間 るみ子 2022-10-21
株式会社フェルミエ取締役会長
他者がどう表現しているかを知る機会を持つことで、味覚と表現が磨かれます
「国産ナチュラルチーズのコンクールJapan Cheese Award(JCA)では、2014年からC.P.A.認定チーズプロフェッショナル有資格者に対し、チーズを客観的に評価し、審査に必要な技術を身につけてもらう審査員養成講座(チーズの品質評価・専科セミナー)を行っています。食べておいしいという感想で終わるのではなく、塩味、甘味などを客観的に官能評価できるように、チーズをテイスティングしながらグループ内で感想を述べあう内容で、月に1度、講座を行っています。
製造工程や乳種、熟成期間からくるチーズの風味や組織の特徴などを理解した人が集まり、同じチーズを他者はどう表現しているかを知る機会を持つことで、味覚とその表現方法が磨かれます。7回中5回以上の出席でJCA専属審査員選考会の参加資格が得られ、通過した人がJCA専属審査員となります。トレーニングを積んだ審査員がグループ審査の核となることで、審査精度の維持向上につながっていると思います。TWSCも、審査以外で、審査員が官能評価の技術を磨ける場があると良いですね」
※C.P.A.=NPO法人チーズプロフェッショナル協会
「フランスのチーズはインパクトが強くワインに合うものが多いのに比べ、日本のチーズは優しくバランスが良いのが特徴です。苦みやしょっぱすぎるといった欠点が少なく、繊細で綺麗な味という印象です。日本ならではの独創性もあり、海外に持っていくと目立ちます。
また、チーズにはフレッシュタイプからハードタイプまでたくさんの種類がありますが、日本では食事に取り入れやすいこともあり、圧倒的にフレッシュタイプが人気です。焼酎も、日本ならではの繊細な風味を打ち出し、海外の食習慣にはまれば、可能性はあるのではないでしょうか」
「JCAでは、受賞したチーズ工房の地域新聞に取り上げて頂くことが多いです。受賞したという結果だけでなくテロワールも伝えてくれるので、消費者も食べる時の楽しみが増えているようです。土地の違いが味わいに表れるという点でウイスキーも同じだと思うので、TWSCも、もっと、造り手やテロワールを伝えていけると良いと思います」
文=馬越ありさ
PROFILE
新潟県佐渡生まれ。1977年チーズ輸入会社チェスコ入社、1986年株式会社フェルミエ設立。フランスやイタリアをはじめ各国のチーズを発掘し、日本に紹介している。また近年発展を遂げている日本のチーズを世界に発信。フランスで開催されるチーズのコンテストの審査員として参加するなど、欧州でも活躍中。チーズが日本人の生活により取り入れられるよう、積極的に活動している第一人者。