009 平田 早苗 2022-10-14
株式会社ポットラックインターナショナル代表取締役/ショコラコンシェルジュ®
出品者へ点数を開示し、より透明性のあるコンペティションに
「2020年からリモート審査となりましたが、リモート審査は自分のペースでできるだけでなく、ベストなコンディションの日を選べるので、審査の精度を年々上げられている実感があります。会場審査だと日程を選べないので、どうしても当日の体調に左右されてしまう部分があります。
チョコレートの世界的なコンペティションであるInternational Chocolate Awards(ICA)や Academy of Chocolate (AOC)もコロナ禍でリモート審査が導入されましたが、全ての審査員が公開されているわけではありません。TWSCは全ての審査員のプロフィールが公開されているだけでなく、審査概要も公開されているので、リモート審査でもコンペティションへの信頼性を維持できていると思います」
「審査で高得点をつけたものが最高金賞をとっており、自分自身は全体的に見て納得感があります。絶対評価で採点される事が望ましく、良い商品が評価された結果、受賞率が高くなっているのだと思います。実際に、二次審査に残ったアイテムはどれもレベルが高く、1点の差をつけるのが難しいほどでした。審査結果を見ると、上位は小数点以下で順位が決まってくるので、審査の精度を上げることは非常に重要だと感じています。
また、出品者に、審査員のテイスティングコメントをフィードバックするだけでなく、点数も開示しても良いのではないでしょうか。ICAでは出品者には点数を開示していて、出品者にとって参考になる数値となっているようです」
「審査基準のオリエンテーション動画は点数をつける際の参考になっていますが、審査結果を見ると、まだ全ての審査員に浸透していないのかなと感じる部分があります。おいしいかおいしくないかという主観的な味の評価を点数としてどのように表現するのか、点数の幅の持たせ方といった審査スキルを上げるプログラムができたら良いと思います。
官能評価には、分析型と嗜好型があり、分析型は審査員の均質化のようなものが求められるのに対し、嗜好型は個々人の趣向が反映されるものであって良いのでは、とも思います。TWSCの審査は嗜好型に近いという共通認識のもと、点数を均質化するのではなく、審査基準に対し個々の審査員が整合性の取れた点数がつけられるようになっていくのが望ましいのではないでしょうか」
「ICAやAOCはアワードロゴを商品に貼ったり、店頭にPOPをディスプレイしたりしているので、受賞結果が消費者にも伝わりやすいと感じます。ICAは、受賞ブランドのホームページのリンクが貼ってあり、消費者は出品企業へスムーズにアクセスできるようになっています。
現在のTWSCでは受賞結果がPDF形式なので、そこからの活用や広がりが少なく、もったいないと感じます。ホームページでの発信を充実させ裾野を広げ、より詳しく知りたい方にオフィシャルガイドブックを手に取って頂けると良いのではないでしょうか。
また、ICAは授賞式もオンライン形式になってしまいましたが、オンラインだからこそ一般の方も視聴できるメリットもあり、注目度を維持することにつながっていました。TWSCは、審査方法などのオペレーションは素晴らしいものになってきたので、それが消費者にも伝わっていくことを期待しています」
文=馬越ありさ
PROFILE
1998年洋菓子製造販売の企業に入社。2005年よりスイーツを中心としたコンサルティング業務をスタートし、以来、製造・販売・企画の経験を生かし、食とスイーツに関する業務で幅広く活動。十文字学園女子大学健康栄養学科で「フードマネジメント論」担当。ウイスキーとショコラのマリアージュ講座なども多数開講し、2018年より『ウイスキーガロア』のテイスターをつとめる。