2021-01-26
スコッチ【0058夜】スコットランドの国民詩人~その②~
バーンズの代表作を挙げたらキリがないが、スコッチ党にとって欠かせないのが、スコッチそのものを歌った『スコッチ・ドリンク(Scotch Drink)』と、『ハギスに捧げる詩(Address to a Haggis)』、そして前回(0057)紹介した『シャンターのタム』だろう。ハギスはスコットランドの伝統料理のことだが、この3つの詩が朗読されるのが、バーンズの誕生日である1月25日前後に、スコットランド中、いや世界中で開かれるバーンズサパー、バーンズナイトと呼ばれる催しだ。
バーンズを愛好するクラブというのが、4~5名の小さなものまで入れると、全世界に2万くらいあると言われている。これはスコットランドのバーンズソサエティーが把握している数字で、スコットランド人のいるところには必ずバーンズクラブが1つや2つはあるというから、その数はもっと多いのだろう。そこが毎年、1月25日前後に、このバーンズナイト、バーンズサパーとう催しをやっている。その会に欠かせないのが、ハギスとそしてスコッチウイスキーなのだ。
人々は詩人の愛したスコッチで乾杯し、ハギスを食べながら(当然、スコッチが振りかけられている)、バーンズの詩を皆で朗読する。この時のスコッチは、スコッチなら何でもよいが、厳密にやろうとするところは、シングルモルトでやる。なぜならば、バーンズが生きた18世紀後半にはモルトウイスキーしかなく、ブレンデッドスコッチはまだ誕生していないからだ。そして会の最後に全員が立ち上がって、腕を組み歌うのが、『オールド・ラング・ザイン』、蛍の光である。それも、もちろん原詩で歌う。
遠く故郷を離れ、散り散りになった友に何十年ぶりに会えた喜びを、互いの健康を願って大好きなスコッチで乾杯しようというのだ。今は卒業式でも、あまり歌われなくなったようだが、『蛍の光』という別れの歌に込められた、これが真実なのだ。
(上)ロバート・バーンズの肖像をあしらった小皿。(下)ブリッグ・オブ・ドーン(ドーン橋)。カティサークという名前は、バーンズの『シャンターのタム』に登場する魔女に由来しているのだが(0057)、作中の舞台となったのがこのドーン橋である。 一覧ページに戻る