2022-07-09
スコッチ【0275夜】アルフレッド・バーナード/ウイスキー界のバイブルとは~その③
ここまでアルフレッド・バーナードの前半生を追ってきたが、アルフレッドがいつからそのような仕事(記者、ジャーナリスト)を始めたのかについては、よくわかっていない。そのレポートは1887年、彼が50歳の時に一冊の本にまとめられ、前述(その②)のようにロンドンで出版された。その後、彼は自分の職業を「ジャーナリスト」と書くようになったという。
アルフレッド・バーナードの著作としては、この『英国のウイスキー蒸留所』以外はあまり知られていないが、同様の書物として、イギリスとアイルランドのビール醸造所を回って書いた「Noted Breweries of Great Britain & Ireland」(本邦未訳)などがある。これは全4巻の大著だったというが、『英国のウイスキー蒸留所』と違って、こちらは現在にいたるも再版はされていないようだ。2010年代に一度オンデマンドの復刻版が出版されたが、それっきりである。
ウイスキーの世界に大きな足跡を残したバーナードだったが、彼の実人生については多くの謎につつまれている。意図的に私的な記録を残さなかったフシがあり、彼の伝記が今日にいたるまで書かれていないのは、そんなバーナードの意志によるところが大きいと言われている。
一人息子のハロルドは1909年に40歳で亡くなり、アルフレッド自身も1918年、81歳でその生涯を閉じている。亡くなったのはロンドン南部のクロイドンだとされるが、じつは彼の墓地がどこにあるのかも分かっていないのだ。まるで真実は彼の書物の中にあるとでも、いわんばかりなのである。
追記:このバーナードの本については何度か日本で翻訳出版の企画がもちあがったが、その度に途中で頓挫している。あまりにも大部であるのと、記述のスタイルが古くて冗長すぎるというのが理由だった。蒸留所についても、案内してくれた人の話をそのまま書いているだけで、いわばデータの羅列になっている。それでも資料的な価値はあるので、翻訳が実現しなかったのは、残念というしかない…。
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