2022-06-30
スコッチ【0267夜】ゲーム料理
スコットランドやイングランドの田舎のレストランに行くと、メニューに「本日のゲーム」と書かれているのを見ることがある。ゲームとは狩猟や釣りの対象となる動物や鳥、魚の総称で、あくまでも食べられることが条件である。釣りの対象となる魚でもカープ(コイ)やブリーム(フナ)、パーチ(カワスズキ)、ローチ(モロコ)などはゲームとは言わない。それらの魚を食べることはないからだ。同様に毛皮が目的のテンやイタチもこの限りではない。
スコットランドは狩猟や釣りが盛んである。主な対象を挙げてみるとレッドディアー(アカシカ)、ローディア(ノロシカ)、ヘアー(野ウサギ)、ライチョウ、キジ、ヤマバト、ウズラ、カモ、ガンなどだ。シカの肉はヴァニスンと言い、ステーキやロースト、スモークにされる。とくにスモークヴァニスンは前菜として人気が高い。
ライチョウやキジもスコットランド料理には欠かせない食材で、ライチョウが解禁になる8月12日は「グロリアス・トゥエルフス」――栄光の12日として、国をあげて盛大に祝われる。日本では雷鳥は天然記念物に指定されていて、食べるなんてもってのほかだが、スコットランドやイングランドでは人気の料理。ウイスキーでもライチョウが描かれたフェイマスグラウスは有名だ。ゲーム料理の代表は、ゲームパイといわれるパイ料理などだ。
魚は以前紹介したサーモンとブラウントラウト、シートラウト、パイクなどで、まれにチャー(イワナ)が加わることもある。すべて淡水魚で鱈やニシン、ハドックなどの海水魚はゲームとはいわない。それらは釣りではなく漁の対象だからだ。
レストランのメニューに「本日のゲーム(Today’s Games)」とあっても、間違って「どんな競技が行われるのですか?」などと、訊かないように。それこそハトが豆鉄砲をくらったような顔をされてしまうからだ。
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