2022-06-28
スコッチ【0265夜】定番みやげとして有名になったショートブレッド
スコットランドは別名「Land of Cake」、ケーキの国と呼ばれるほどケーキづくりが盛んである。オーツケーキ、ダンディーケーキ、スコーン、パンケーキ、ポテトスコーンなど、いわゆるベーキング料理が数多く存在する。「フランスの女性は木のスプーンを持って生まれてくるが、スコットランドの女性は(生地の)のし棒を持って生まれてくる」と言われるくらい、スコットランド女性はケーキ作りが得意である。その代表がオーツケーキとこのショートブレッドである。ショートは短いという意味ではなく、「さくさくしていて、もろい」ことを言う。
ショートブレッドはいたってシンプルなケーキで、それだけに地域によっても各家庭によっても、レシピや形が様々である。古くはオート麦の粉を使ったというが、現在は小麦粉(薄力粉)、バター、上白糖を使うのが一般的だ。スコットランド人は、特にバターの質が決め手だという。地域によっては小麦粉のほかに米粉を混ぜることもあり、さらにオレンジやレモンの皮、アーモンドを入れることもある。最北のオークニーやシェットランド諸島では、ショートブレッドのことを「ブライズ・ボン」(Bride’s Bonn)といい、これはキャラウェイシード(ヒメウイキョウの実)を加えるのが一般的だという。
形も様々だが伝統的なシェートブレッドは、ピザのように円形で(実際には扇形に切り分ける)、へりの部分に指で凹みを入れる。これは太陽の光線をシンボル化したもので、太古の昔の「太陽信仰」の名残だとも言われている。もちろん今では一般家庭でショートブレッドをつくることはほとんどない。スーパーでもどこでも売っているし、スコットランド土産としてもすっかり定着し、日本のデパートでも売っている。中でもスペイサイドに本社工場があるウォーカーズのショートブレッドは、赤のタータンチェックのパッケージが日本でもすっかりお馴染みだ。しかし、そんないわれを知って食べれば感激もひとしおである。
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