2022-06-24
スコッチ【0261夜】エリザベス女王も大好き!?イギリスの国民食、マーマレードサンドウィッチ
イギリスの朝の定番になっているのが、カリカリに焼いた薄切りトーストとマーマレード。先日のエリザベス女王のプラチナジュビリーでは、パディントンベアーと女王が交わすワンシーンが放送され話題になった。女王が「ソードゥーアイ(私もよ)」と言ってバッグから取り出したのが、マーマレードサンドウィッチだったからだ。じつはこのマーマレードの発祥の地がスコットランドだということは、ほとんど知られていない。
起源についてはいくつかの説があるが、もっとも有力なのがメアリー女王にまつわるものだ。女王はスコットランド人の父ジェームズ5世とフランス人の母マリー・ド・ロレーヌの間に生まれた。もともとジェームズ5世がフランス好みで、さらに彼女が生まれて6日目に死去したため、諸事フランス風に教育された。宮廷の女官も養育係も、すべてフランス人だったという。
メアリー女王は、オレンジに砂糖と水を加えて煮込んだデザートが大好き。いつも食べられるというものではなかったが、病気のときには我儘を聞いてもらえた。そのため仮病を使うこともしばしば。いつしかこのデザートは“Marie est malade”――フランス語で「メアリーは病気」と呼ばれるようになり、これがなまって、マーマレードになったのだとか。もっともこれはデザートであり、今日のようなジャムではない。マーマレードというジャムを作り、一躍有名にしたのはスコットランド東部の港町、ダンディー市に住むケイラー夫妻であった。話は18世紀初頭に遡る。
セビルオレンジを満載したスペイン船が嵐のため、ダンディー港に停泊していた。しかし天候待ちが長引き、オレンジは売り物にならなくなる。そのオレンジを安く買いたたいたのがジェームズ・ケイラー氏。ところがこのオレンジはあまりに苦くて、そのままでは売り物にならない。苦境に立たされた夫を救ったのが、妻のジャネットである。彼女は売り物にならない苦いオレンジにレモンと砂糖を加え、ジャムを作ることを思いついた。これが今日のマーマレードの起源である。まさかこのマーマレードが、世界的に有名になり、イギリスの食卓に欠かせないものになるとは思いもしなかったであろう。
世界中いたるところで作られ、マーマレードを知らない人はいないと思われるが、現在でもダンディー市で作られるマーマレードだけは特別な存在で。ケイラー夫妻に敬意を表し、「ダンディー・マーマレード」と呼ばれているのだ。
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