2022-06-21
スコッチ【0260夜】スコットランドの魚介類~その②<オイスター>
サーモンと並ぶスコットランドの海の幸の王様と言えば、オイスターである。特にスコットランド産の生ガキは、グルメの間で定評があり、産地によってたとえば「オークニーオイスター」「スカイオイスター」「アイラオイスター」などと呼ばれ、ロンドンあたりのレストランでは高値がつく。なかでも最高とされるのが、西ハイランドのロッホファイン湾一帯で獲れる「ロッホファインオイスター」で、キンタイア半島周辺にはこのオイスターを食べさせる〈オイスターバー〉がいくつもあり、いつ行っても客で一杯だ。
アイラ島で驚いたのは、生ガキにスモーキーなアイラモルトを振りかけて食べること。「これが一番うまい」と、島民に勧められて試してみたが、カキのとろけるような旨味と潮の香りに、ウイスキーのピーティーでスモーキーな風味が溶けあい、思わず唸ってしまった。ウイスキーの島、アイラ島ならではの食べ方である。アードベッグやボウモアなどがよく合う。ただし、お酒に弱い人には勧められない…。
スコットランドで養殖されるオイスターは、すべて日本と同じ真ガキである。天然ものはほぼ皆無で、すべて養殖である(最近グレンモーレンジィがドーノッホ湾でネイティブオイスターの復活に向けたプロジェクトヲスタートさせているが)。ただし日本で一般的なイカダなどを使った懸垂式の養殖ではなく、海底に設置した棚に直接置く、いわば固定式の養殖法である。これは潮の満ち引きを利用したもので、アイラの北にあるグィナート湾がもっとも有名。ここは干満の差が5メートル近くもあり、日に2回、潮が引くと袋に入れられたカキは水面に顔を出す…。
養殖をやっているのは、近くにある島の牧畜農家で、収穫はトラクターを使って潮の引いた海におりて行き、オイスターを袋ごと回収する。出荷前の砂ぬきも、驚いたことに乳牛の牛舎の片隅で行っている。あくまでも本業は牧畜業で、オイスターの養殖は副業なのだ。もちろんこのオイスターはアイラ島のレストランなどで食べることができるが、直接養殖をやっている農家を訪ねていけば、その場でむいて食べさせてもらう。アイラに行かれたら、ぜひ試してみてはいかがだろう。
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