2022-06-16
スコッチ【255夜】スコットランドの国民食ハギスとは~その①
スコッチブロスやコカリーキーがスコットランドのナシャナルスープだとすれば、こちらは正真正銘、スコットランドの「国民食」である。しかしスコットランド人以外からはゲテモノ料理のように思われ、これほど恐れられる料理も珍しいかもしれない。
初めてスコットランドに行ったときに、ロンドンのイギリス人の友人から「スコットランドにはハギスという化け物がいる。ハギスの肉だけは食べるな」と、脅されたものだ。もちろん、ハギスなどという生物は存在しない。ハギスの正体は腸詰め料理で、ソーセージの一種だと思えばよい。しかし、見た目がお世辞にも上品とは言いがたく、それ故に恐れられるのだろうか。
ハギスの材料は羊の内蔵。心臓や腎臓、肝臓、肺などとタマネギ、オート麦、そしてスエット(羊の脂肪)である。まずオート麦をフライパンなどでよく炒って、それをあらかじめ茹でてミンチにした内蔵とスエット、タマネギのみじん切りを加え、塩・胡椒、ハーブなどで味をととのえる。次によく洗い一日天日乾燥させておいた羊の胃袋(!)にそれを詰め、タコ糸などで縫いあわせる。このとき、胃袋を一杯にしないで中身を半分くらいにし、さらに針で表面に数ヵ所穴を開けるとよいとされる。それを鍋に入れ、4~5時間ゆっくりと茹でたらハギスの出来上がりである。中身を一杯にせず、針で穴を開けるのは、オート麦が膨張して袋が破れるのを防ぐためだ。
通常は胃袋から中身を取りだし、それを皿に取り分け、マッシュドポテトとマッシュドターニップ(黄カブ)を付け合わせにしていただく。消化があまり良いとは言いがたく、アツアツの状態で食べるのが肝心だが、慣れるとこれはこれで、美味しい料理である。オート麦のプチプチとした食感がたまらなく、スコットランド人はハギスに少量のウイスキー(もちろんスコッチ)をかけて食べるのが、通であるという。それもブレンデッドではなく、シングルモルトをかけるのがウイスキー通のやり方だ。その理由は次回で。(つづく)
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