2022-06-07
スコッチ【0246夜】野ウサギとカニを使った伝統のスープ、ボウドブリー、パータンブリー
ブリーは本来ゲール語で「液体」の意味で、転じてスープを指す言葉になったと(0244)で紹介した。ここでは、よりローカルなブリーであるボウドブリーとパータンブリーについて。ボウドブリーのボウドとは野うさぎ(Hare)のことで、パータンはカニのことだ。
ボウドブリーは蒸し焼きにした野ウサギを使ったスープで、本来は余った肉を利用して作られる。「ジャグド・ヘアー」(Jugged Hare)という料理が別にあり、その余り肉を翌日などにスープにしたものだ。料理の本には、カレーなどにこの肉を入れても美味しいと書かれている。野ウサギのパイとかロースト料理は食べたことがあるが、このボウドブリーは一度も食べたことがない。メニューで見た記憶もほとんどない。イギリス全土でよく見かけるラビットと違い、ヘアーは大型で足の長い野ウサギのこと。スコットランドでも、その数が減っているのだろう。ちなみにラビットは『ピーターラビット』に描かれている、あの可愛らしいウサギで、そういえば今年(2022年)は、ピーターラビットの物語が誕生して100周年だという。シリーズ最初の物語の舞台は、スコットランドのダンケルドである。
それはともかく、カニを使ったパータンブリーは、ヘブリディーズ諸島で何度か口にしたことがある。材料はあらかじめ茹でて身をほぐしたカニとミルク、チキンか野菜のスープストック、シングルクリーム、それに少量のライスである。それも細長いロンググレーンライスを使うのが一般的という。ミルク味たっぷりのコクのある美味しいスープで、味付けは塩・胡椒、パプリカ、アンチョビ・エッセンスなど。ライスを使うといってもリゾットとは異なる。
ただこれもアイラ島で自炊生活をしている時に一度料理してみたことがあったが、ストーンクラブと呼ばれるカニの殻が文字どおり石のように硬く、身を取りだすのにたいへん苦労をした。浜で釣りをしていたときに漁師から直接もらったカニだったが、他のカニ、あるいはロブスターなどを使ったらどうなのだろう…。いつか試してみたいと思いながら、30年近くたった現在もその機会がない。時間もなければ、釣りでアイラ島を訪れることもできなくなったからだ。
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