2022-06-05
スコッチ【0244夜】戦場の兵士の体を暖めたスコッチブロス
スコットランドの伝統料理といえば、それはスープである。スープを表す言葉はブロス(Broth)とブリー(Bree)の2つがあり、スコットランドのスープは、それだけでも立派なメインディッシュとなりうると言ったら大袈裟だろうか。 風雪に曝された厳しい自然環境の下で暮らすスコットランド人にとって、てっとり早く体を暖めてくれるスープは生活に欠かせないものだった。たっぷりのバターを塗ったパンや、オート麦(カラス麦)を焼いてつくられたオーツケーキなどと一緒にいただく。パブでランチにスープを注文すると、どこでもパンが一緒についてくる。昼食だったら、これだけで充分という気がする。
スープには多くの種類があるが、代表格はその名もスコッチブロス。スコッチブロスは肉や野菜にオート麦、大麦などを入れて煮込んだもので、ハイランド地方に行くと「バーレー(大麦)ブロス」と呼んでいる所もある。あるいは「スコッツブロス」とも言う。誇り高きハイランド人は自分たちのことをスコティッシュではなくスコッツと呼ぶ。スコッツとはもちろん、スコット族の末裔を意味する言葉で、スコッチブロスではなくスコッツブロスである。伝統的なハイランド人はスコッチウイスキーも、スコッツウイスキーであると主張する。
肉はラムやマトンを使用するが、なければ鶏や牛でもかまわない。首などの安い部位の肉を使うのが一般的だ。野菜はネギ、タマネギ、ニンジン、グリーンピース、ターニップと呼ばれる黄カブなど。塩・胡椒で味つけをして、みじん切りにしたパセリを最後に加える。大麦、オート麦のプチプチした食感と、とろみがついた素朴なスープで、これだけでも充分お腹が一杯になるし、体も暖まる。かつて戦場でハイランドのクラン兵士たちの体を暖めたのも、このスコッチブロスだったという。
現在も釣りやゴルフで冷えきった身体を暖めるには、これ以上の料理はないかもしれない。
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