2022-06-03
スコッチ【0242夜】グレンフィディックが品種改良した琥珀色のバラ
あらゆるイギリスの庭園で、あまねく栽培されているのが国花のバラである。バラのないイングリッシュ・ガーデンなんて、ちょっと考えられない。当然品種改良も盛んで、ありとあらゆる色彩のバラがつくりだされている。唯一の例外が青いバラで、青色のバラだけはどうしてもつくれないといわれてきた。
しかし現在は、青いバラも登場している(そのハズだ…)。可能性を拓いてくれたのは遺伝子工学、バイオの技術で、これには日本の酒造メーカーも大きく貢献しているという。そういえば20年くらい前に、青いカーネーションを世に送り出したのも日本の酒造会社であった。酒造メーカーとバラの品種改良、一見何の脈略もなさそうだが、意外と両者の関係は近いのかもしれない。
これはバイオの技術ではないと思うが、スコットランドでも同様の試みがなされている。ブレンデッドスコッチのグランツ、シングルモルトのグレンフィディックで知られるウィリアム・グラント&サンズ社が1990年代につくったのが、琥珀色の花弁を持った「グレンフィディックのバラ」であった。琥珀色はもちろんウイスキーの色であり、写真で見るとちょっとわかりづらいが、本物は鮮やかなゴールド、黄色がかった琥珀色をしていた。
グレンフィディックは世界で一番売れているシングルモルトで、このバラはまさにグレンフィディックの色そのもの。蒸留所の庭に、今でも誇らしげに咲いているので、もし行く機会があれば忘れずに見ていただきたい。
バラは愛と勇気、美の象徴といわれる。色彩によって花言葉はちがい、赤は「愛情、熱烈な恋」、白は「私はあなたにふさわしい、尊敬」。黄色は「君のすべてが可憐、薄れゆく愛、嫉妬」で、ピンクは「わが心君のみが知る、満足、温かい心」を象徴しているという。
スコットランドを代表するウイスキーメーカーがつくった「グレンフィディックのバラ」は、どんな花言葉がふさわしいのだろうか。ウイスキーの語源は“命の水”を意味するゲール語のウシュクベーハ。ならば「永遠の命、その愛」とでも言うべきか…。
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