2022-05-31
スコッチ【0239夜】スコットランドの朝の定番。ご飯とみそ汁が欲しくなる…
スコットランドの朝食の定番となっているのが、キッパーで、キッパーとは鰊(ニシン)の燻製のことだ。サーモンはスコットランドでも食材の王様だが、値段の方も王様並みで、スモークサーモンはスコットランドで食べても、決して安くはない。それに対して庶民の魚、スコットランドの“ナショナルフィッシュ”と呼ばれるのが、このニシン(英語ではヘリング)である。
鰊を使った料理は数多くあるが、もっとも一般的なのがキッパーと呼ぶ燻製。ただし燻製にもいろいろなやり方があって、内臓を取っただけで丸ごと燻製にしたのがブローターズ(Bloaters)で、背開きにし、一度濃い塩水につけた上で8時間ほどスモークしたのがキッパーである。ブローターズは一度だけ食べたことがあるが、滅多にメニューに載ることはない。キッパーズ(複数形で言われることも多い)はスコットランドばかりでなく、今ではイギリス中のホテルの朝食メニューとなっていて、スコティッシュブレックファースト、イングリッシュブレックファーストには欠かせない料理となっている。
その中でも最良のキッパーズは、西スコットランドのロッホファイン湾一帯で獲れた鰊を使ったものだと昔から言われてきたが、現在はロッホファイン湖(内海)で獲れる鰊は多くなく、それに代わってヘブリディーズ諸島や、アイルランド産がメインだという(そういえばアイルランドの朝食にも、このキッパーズが出てくる)。
キッパーは油と塩味がきいているので、レモンをギュッとしぼっていただくのがイチオシだ。ボリュームたっぷりで、これだけでお腹が一杯になる。庶民の重要なタンパク源として、かつては朝食に限らず、昼食や夕食でも食べられたということだが、それもうなずける。長旅で西洋料理に飽きたときに、このキッパーズはたいへん重宝する。まるで日本の焼き魚のようだからだ。 ただ、ご飯とみそ汁、そしてお箸があればと思うのは、私だけだろうか…。
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