2022-05-28
アイリッシュ【0236夜】すべては聖パトリックから始まった…。アイルランドの守護聖人とは
アイルランドの守護聖人といえばセント・パトリックで、パトリックの命日である3月17日は、セント・パトリックス・デーとして、全世界でパレードなどが盛んに行われている。緑の衣装に身を包んだ多くの人が、パトリックを偲んで街に繰り出すのだ。イングランドやスコットランド、ウェールズにもそれぞれ守護聖人がいるが、セント・ジョージの日や、セント・アンドリューの日に同様のことが行われるとは、ついぞ聞いたことがない。何故、セント・パトリックだけが盛大に追悼されるのだろうか(追悼というより、今では盛大な祭りだが)。
パトリックは西暦4世紀終わり頃に、今のウェールズで生まれたとされている。両親はウェールズ人だったというが、一方でローマ人という説もある。場所もバナベムタバニアイというところだったとされるが、それがどこなのかはっきりしない。実はウェールズ説、スコットランド説の両方があるのだ。パトリックは16歳の時にアイルランドの海賊によって拉致され、奴隷としてアイルランドに売られた。それから6年間、北アイルランドのアントリムで羊飼いとして働かされたが、脱走に成功。大陸に渡ってキリスト教の聖職者となり、神のお告げにより、奴隷として辛酸をなめたアイルランドにもどり(AD432年)、そこでキリスト教を布教をすることに。パトリックはアイルランドに365の教会を建て、12 万人もの人々をキリスト教に改宗させたことで、のちに聖人に列せられている。
その時キリスト教の根本教義「三位一体」を説くのに用いたのが、三つ葉のクローバーに似たシャムロックで、これはアイルランドの国花になっている。アイルランドを訪れると、いたるところに聖パトリックの像が置かれているが、そのパトリックが右手に持っているのが、このシャムロックである。緑というのはこのシャムロックの色で、そのためセント・パトリックス・デーは緑一色に飾られるのだ。
さらに、アイルランドで一番多い男子の名前がパトリックで、パトリック人気をうかがい知ることができる。ちなみにパトリックは英名で、ローマ(ラテン語)ではパトリキウスとして知られているという。
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