2022-05-26
スコッチ【0234夜】焼酎樽でフィニッシュさせたスコッチ
スコッチの熟成にはオークの樽しか認められていないが、オークの樽であれば何でもいいというわけではない。バーボンやシェリー、ワインの空き樽は伝統的に認めてきたが、カルヴァドスや焼酎の樽は伝統的ではないとして認めてこなかった。それが一転、認めると発表したのは、2019年の6月のこと。背景に何があったか分からないが、さっそく、それを製品化したのが、トマーティンの「クボカン」の1本だった。
クボカンはトマーティンが年に1回、1月の1ヵ月間だけ仕込むライトリーピーテッドのモルト原酒で、その麦芽のフェノール値は15ppmだという。今まではクボカンという伝説上の犬(魔犬)をパッケージにあしらってきたが、今いち消費者にアピールできないということで、最近になって大胆なパッケージ変更を行った。それにともなって限定品として出されたのが「クリエーション・シリーズ」。そのうちのバッチ2が、焼酎樽でフィニッシュさせたトマーティンのシングルモルトだった。
もちろん焼酎樽はトマーティン蒸留所のオーナーでもある宝酒造の麦焼酎用の樽。連続式蒸留焼酎の原酒を詰めた樽だというから、昔でいう甲類焼酎の「純」の原酒用の樽だろうか(宝酒造の原酒工場、宮崎県の高鍋町には2万数千樽の焼酎樽が貯蔵されている)。トマーティンでは、それに若干のヨーロピアンオークの新樽の原酒を混ぜ、製品化しているという。
これはスコッチとしては世界初となる焼酎樽でフィニッシュさせたウイスキーで、日本での発売予定はないそうだが、どんな味に仕上がっているのか、日本人としては気になるところ。ぜひ日本でも販売してほしいと思うのは、私だけだろうか。
ちなみにウイスキー文化研究所が2019年にボトリングした、ロイヤルブラックラのシングルカスクはカルヴァドス樽で熟成させていたため、スコッチと名乗れず。「スピリッツドリンク」とラベルに表記されていた。あと数カ月遅ければ規定が変わり、スコッチと名乗れていたのだが…。
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