2022-05-19
スコッチ【0227夜】大英博物館の至宝ルイス島のチェス駒とハリスツイード
アウターヘブリディーズ諸島のルイス島の西のはずれ、アビンジャラク蒸留所があるウィグの砂浜から1831年に発見されたのが、「ルイス・チェスメン」と呼ばれるチェスの駒だ。12世紀頃にノルウェーのヴァイキングがセイウチの牙から作ったもので、発見されたのは78個の駒だったという。発見したのは島の住人のマルコム・マクラウドで、のちにそれを手に入れた古物商のロデリック・ウィリーによって、エジンバラの骨董市に持ち込まれた。その時、78個中の67個を買い取ったのが大英博物館で、今でも大英博物館の重要な宝となっている。
2018年に日本で開かれた「大英博物館の秘宝展」では、その代表としてこのルイスの駒が紹介され、その時の公式パンフレットの表紙にも採用されていた。ちなみに残りの11個は、現在スコットランド国立博物館が所有している。さらに2019年にスコットランドの古物商の机の中から別のチェスの駒1個が発見され、サザビーズに鑑定が依頼された。これは本物のルイスの駒の1つと分かり、2020年の暮れのオークションで1億円以上の値がついたという。700万点にもおよぶ大英博物館の所蔵品の中で、ルイスのチェスの駒が“秘宝中の秘宝”といわれるゆえんである。
ルイス島がチェス駒で有名だとすれば、ハリス島を有名にしているのが、ハリスツイードだ。厳しい自然の中で育ったハリス、ルイス(ハリス島とルイス島は1つの島)の羊の毛を紡ぎ、それを糸にして家内工業的に織り上げたもので、自然の風合いと、雨風をしのぐヘビーデューティなところが受けて、世界ブランドへと成長した。ただし現在では原毛は必ずしもハリス・ルイス産でなくても構わず、糸にしてそれを染色するのも本土の工場で行っている。ただし織物にするのは、すべてハリス・ルイス島と決められている。ウィーバーと呼ばれる島の織子は現在650人ほどが登録されており、すべて家内工業的に手作業で織られているのだ。ハリス・ルイスで年間に織られる量は約450万ヤードにもなるという。
ハリスツイードはその名前からハリス島の特産品と思われがちだが、650人のウィーバーの大半はルイス島の島民で、ルイス、ハリスどちらの島で織られても、それは「ハリスツイード」と呼ばれるのだろうか。このハリスツイードには認定マークが付けられていて、そこに書かれているナンバーは、ウィーバーそれぞれの識別番号となっている。そのため専用のサイトで検索すれば、そのツイードを誰が織ったか分かるようになっているのだ。
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