2022-05-18
スコッチ【0226夜】富や名誉や栄光のためではなく、自由のために戦うスコットランド独立を謳ったアーブロース宣言
アンガス地方のアービッキー蒸留所から南に8マイルほど行ったところにあるのがアーブロースの町で、この町にはその名を有名にしているものが2つある。1つはアーブロース修道院で、ここで1320年に書かれたのが史上名高い『アーブロース宣言(Declaration of Arbroath)』だ。これはスコットランドの独立を宣言(嘆願)する、ローマ教皇ヨハネ22世に宛てたラテン語の書簡で、起草したのは僧院長のバーナードだったといわれている。
スコットランドは長年、南の大国イングランドの侵略に悩まされていたが、それを決定的に打ち破ったのがロバート・ザ・ブルース王だった。エドワード2世率いるイングランド軍に大勝したのが1314年のバノックバーンの戦いで、この勝利はスコットランドの独立を決定的なものとしたが、それにはしかし、ローマ教皇の許可が必要だった。
実はロバート・ザ・ブルースは政敵だった貴族を殺したことで、ローマ教皇から破門にされた身。王の破門を解き、ロバートこそが唯一の、そして正統なるスコットランド王であることを認めてもらえるよう、スコットランドの貴族50人の署名とともに教皇のもとに、送り届けられたのが、『アーブロース宣言』だったのだ。
そこには「我々が戦うのは富や名誉や栄光のためではなく自由のためである。いかなる犠牲を払っても独立のための戦いはやめない」と、高らかに宣言されていた。後年、このくだりはアメリカの独立宣言書の中にも引用されているという。
もう1つは、EUの地理的呼称にもなっているアーブローススモーキーズという燻製。これはハドック(鱈の一種)の燻製だが、スモーク材にオークなどの広葉樹を使った独特の燻製法で、港の近くには今でもアーブローススモーキーズをつくる6~7軒の燻製屋が軒を連ねている。もっとも、今はハドックだけではなく鮭や他の魚介類の燻製もつくってはいるが、港を散策すると美味しそうな燻製の匂いがどこからともなく漂ってきて、食欲をそそる。アーブロースに行ったら、ぜひお試しあれ。
一覧ページに戻る