2022-05-17
スコッチ【0225夜】スコットランド女王メアリーのロマンスの舞台となったウィームス城
ローランドのファイフ地方に2014年に創業した、キングスバーンズ蒸留所のオーナーであるウィームス家は、800年以上続くスコットランドの名門貴族だ。フォース湾を挟んでエジンバラの対岸に城があり、今もそこに一族の末裔が住んでいる。現在の当主は30代目のマイケル・ウィームス氏。キングスバーンズ蒸留所を取り仕切る社長のウィリアムさんとは、年の離れた従兄弟同士だという。そのウィームス城を訪ねて、マイケルさんから話を伺ったことがある。
城ができたのは1240年で、一度イングランド王エドワード1世により破壊されたが、その後再建。実はウィームス城は16世紀、スコットランド女王メアリーと、彼女の2番目の夫であるダーンリー卿が出会った城として有名だ。石畳の古いコーチヤードがあり、そこへ馬車で入ってきたダーンリー卿を、たまたま滞在していたメアリーが城の窓から見てひと目惚れ。それがそもそもの二人の馴れ初めだというのだ。現在、それを記念(?)して壁にはメアリー女王のレリーフがはめ込まれている。ウィームスモルト社(キングスバーンズ蒸留所の運営会社)が、『ダーンリージン』というジンを出しているのは、そのことにちなんでいる。
ウィームス家はピートの採掘と石炭ビジネス(18~19世紀)で成功した家系でもあり、その富を元手にケニアで紅茶栽培も手がけている。個人所有の茶園としてはケニア最大だという。さらに西オーストラリアのパース近郊でワインビジネスを展開し、それがうまくいかないと分かると、すべてのブドウの木を抜いて、新たな作物としてアボカドの栽培を始めたという。このアボカドのビジネスは軌道に乗り、現在は東南アジアやインドなどに多くが輸出されているのだとか。
古くから続く貴族といえども、今はエステート経営だけで生き残るのは難しく、多くのビジネスも手がけているのだ。そのひとつがキングスバーンズ蒸留所だが、話を伺っていて、そのスケールの大きさ、世界を股にかけたビジネスなど、実に興味深いものがあった。
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