2022-05-11
スコッチ【0219夜】アイラ9蒸留所の生産能力と 年間2,000台の麦芽運搬車!?
アイラ島で稼働中の9蒸留所を生産能力(フル生産した場合の年間生産量)を多い順にまとめたのが、表1だ。これを見ると最大がカリラの650万リットルで、最小がキルホーマンの65万リットルとなっている。キルホーマンは設備を倍増してこの数字だから、元がいかに小さいかよく分かる。2019年に本操業が始まったアードナッホーはポットスチルが2基ながら、生産能力が100万リットルとキルホーマンの倍近いの能力がある。
それぞれのオーナー企業を見ると、ディアジオが2蒸留所、ビームサントリーが同じく2、そしてルイヴィトン、レミーコアントロー、ディステル社が1蒸留所ずつとなっている。ディアジオはイギリスの会社で、ビームサントリーは日本、ルイヴィトン、レミーコアントローはフランス、ディステルは南アフリカと、9蒸留所中7ヵ所が外国資本で、スコットランド資本といえるのはキルホーマンとハンターレインの2つしかない。いかにアイラの蒸留所が外国資本の傘下にあるかがよく分かる。アイラ島の9蒸留所の生産能力を合計すると2,300万リットル。スコッチのモルトウイスキーで現在稼働中の蒸留所は全部で130カ所(2021年)。その合計は約4億1,500万リットルなので、アイラはその5.5%ということになる。では、これに要する大麦麦芽の量はどのくらいになるのだろう。
現在のコンチェルト種、ロリエット種などのアルコール収量は、麦芽1トン当たり約420リットル。ピート麦芽はやや収量が落ちるので、仮に400リットルとすると、2,300万リットルを造るためには、約5万7,500トンの麦芽が必要になる。スコッチ全体では約100万トンだ。
ラガヴーリンやカリラ、ラフロイグ、アードベッグにピート麦芽を供給しているポートエレン製麦は、1973年に創業したディアジオ系のモルトスターだが、とてもそこまでの供給能力はない。どうしても本土でつくられた麦芽に頼らざるを得ない。麦芽運搬車は30トン積み(正確には29トン)の大型トレーラーだが、5万7,500トンの麦芽をアイラの蒸留所に運ぶためには、年間約2,000台が必要となる。1日換算で約5.5台で、つまり、それだけ多くの麦芽運搬車が狭いアイラの道を走り回っていることになる。しかも、そのうちの8割近くが本土からフェリーに乗ってアイラ島にやってくるのだ。
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