2022-04-26
スコッチ【0205夜】アイラ島あれやこれや~その②
アイラ島に渡る交通手段は海と空の2通りあるが、多くの観光客が利用するのが、本土のケナクレイグからポートエレン、ポートアスケイグに渡るフェリーである。カレドニアン・マクブライン社、通称カルマック社が運営する大型のフェリーで、ウイスキーを満載したトレーラーも麦芽運搬用の大型トラックも、皆このフェリーを利用する。時間はどちらも2時間20分ほどだ。
アイラ島に人が住み始めたのは今から1万年ほど前の中石器時代とされるが、今日のアイラ人の祖先は鉄器時代のケルト民族だといわれる。最初はそのうちの一派のピクト族が定住したが、やがて北アイルランドから渡ってきたゲール族が支配的となった。このゲール族を9世紀頃から支配したのが、北欧のヴァイキングで、現在のアイラ人の血の中にも、ヴァイキングの血が流れている。独立心に富み、伝統を守りながらも新しいことにチャレンジする精神は、海洋民族として世界の海に出ていったヴァイキングの血が、色濃く流れているせいかもしれない。
アイラ島は今でも多くの船乗りを輩出している島で、世界中の国を船で回ったという島民も多い。特にアイラの西端、ポートナハブンの村人はかつて船乗りだったという人が多く住んでいる。ブナハーブンがラベルに描き、シンボルとしていたのが、ボンネットというスコットランドの伝統的な帽子を被った船乗りの姿だった。今も小さくではあるが、この船乗りのシンボルマークが使われている。
そんな独特の歴史・文化のせいなのか、かつて島民は「俺たちの隣人はアメリカ人」だと、よく言っていた。つまり広大な大西洋という海を介して、直接アメリカと接しているというわけだ。いかにもアイラ人らしい「気宇壮大な話」と聞き流していたが、島民にとってアメリカは意外と近いのかもしれない。少なくともイングランドよりは、歴史的にも精神的にもはるかに近い存在なのだ。
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