2021-12-28
ジャパニーズ【0199夜】神戸ゴルフ倶楽部とA・H・グルーム~その①
先日、新しくできた神戸の六甲山蒸溜所の取材で六甲山に行った時に、すぐ近くの公園でアーサー・ヘスケス・グルームの胸像を見かけた。すっかり忘れていたが、グルームは我が国最古のゴルフ場の創設者としても知られている。そのゴルフ場が神戸ゴルフ倶楽部の六甲山コースで、開設は1903年のこと。実はゴルフ倶楽部創設100周年の際(2003年)に、理事の方がわざわざスコッチ文化研究所(現ウイ文研)のオフィスを訪ねてきたことがある。理由はグルームが愛飲していたスコッチウイスキーの銘柄が分からないかということであった。
持参してくれたグルームの写真には、横にウイスキーのボトルが映っている。残念ながらその写真は活版印刷のもので、原版は失われて残っていない。写真の中のグルームさんは、大きな口髭をたくわえ、どことなくC・W・ニコルさんや、エジプト考古学者の吉村教授を彷彿させる。理事の方の話によると、そのウイスキーは「ダンピーウイスキー」として、神戸ゴルフ倶楽部で言い伝えられてきたという。18ホールのうちの1番ホールが『ダンピー』で、ここでホールインワンをすると、グルームさん愛飲のウイスキーが1箱もらえたのだとか。だからダンピーの中身について知りたいということだったが、写真を見た時にそれはブランド名ではなく、「つまらない物、捨ててしまうような物」を意味するダンプ、ダンピングからきているのではないかと思った。
かろうじて読めるラベルの文字からは、それがスコッチウイスキーで、しかもブレンデッドと分かるが、銘柄名が読めないのだ。ロゴとして使われているのはデミライオン(半身の獅子)で、それが2頭連なっている。1頭のデミライオンをロゴマークに使っているのは、有名なホワイトホースだが、2頭のデミライオンはありそうで、意外とない。それはともかく、グルームさんはイギリス人なので、特有のユーモアセンスで「つまらない物」と表現したのだろうか。真相は不明のままである。(つづく)
六甲山頂にある六甲山蒸溜所。 こちらは、3階の1フロアにある熟成室。 「六甲山の開祖」とも呼ばれたアーサー・ベスケス・グルームの胸像。日本の近代化はドイツに倣ったというのが一般的なイメージかも知れないが、『0037 イギリス最北の灯台と、その名を冠したウイスキー』で紹介した灯台建設など、実はスコットランド人も大きな貢献をしているのだ。 一覧ページに戻る