2021-12-23
ジャパニーズ【0193夜】本坊酒造のル・パピヨン・シリーズ~その①
ウイスキーのラベルには生物をモチーフとしたシリーズも多い。旧UD社(現ディアジオ)の〝花と動物シリーズ〟は有名だが、昆虫、それも蝶だけをモチーフにしたウイスキーというのは、世界でも例がないかもしれない。それも日本に棲息する蝶のみをラベルにあしらったのが、本坊酒造が販売する「マルスモルト・ル・パピヨン」シリーズ(パピヨンは蝶のこと)だ。
シリーズの発売は2017年2月からで、現在(2021年12月)までに11種類のボトルが販売されている。マルスモルトという名前のとおり、中身はすべて本坊酒造のモルトウイスキーで、1から10までは、マルス信州蒸溜所で蒸留されたモルトウイスキーが瓶詰めされていた。これらは2つの例外を除いて、すべてシングルカスクのカスクストレングス、ナチュラルカラーである。シリーズ第8弾の「ヤクシマルリシジミ」だけが、複数樽(2樽)のヴァッティングで、少量の加水調整もされている。2021年5月に発売された第11弾はマルス信州のシングルモルトではなく、マルス津貫の原酒2樽をヴァッティングした、カスクストレングスのウイスキーだった。津貫の創業は2016年で、今では信州だけではなく、津貫の原酒も使えるようになっているからだ。
実はラベルの蝶を決め、その蝶にふさわしい原酒を選んでいるのが、本坊酒造の現社長・本坊和人氏だ。本坊さんは1954年(昭和29年)の生まれで、育ったのは現在津貫蒸溜所がある鹿児島県の南さつま市加世田である。加世田は周りを山々に囲まれた盆地で、当時本坊酒造は焼酎造りのかたわら、みかん栽培の振興にも力を入れていたという。本坊少年の遊び場はみかん畑など、自然豊かな南さつまの山野で、そこで昆虫、とりわけ蝶に夢中になっていたのだ。(つづく)
南さつま市の自然豊かな場所に建つ津貫蒸溜所。 ル・パピヨンシリーズの「ギフチョウ」。 ル・パピヨンシリーズの「クジャクチョウ」。 一覧ページに戻る