2021-12-24
ジャパニーズ【0194夜】本坊酒造のル・パピヨン・シリーズ~その②
前回(0193)の続きだが、地元鹿児島から東京の慶應義塾大学に進学した本坊さんは、慶應の昆虫研究会に入部。蝶の採集は鹿児島から日本全国に広がった。さらに当時、本坊グループがブラジルに工場を持っていたこともあり、大学卒業後は自ら志願してブラジル赴任を申し出た。もちろんブラジルに棲息する南半球、熱帯の蝶を採集したいというのも、その目的だったという。そういう意味では筋金入りの蝶好きであり、その知識は素人の域をはるかに超えている。だからこその「ル・パピヨン」シリーズなのだ。
本坊さんのル・パピヨンシリーズにかける想いは、「ウイスキーの熟成に関わる自然環境を日本の蝶をモチーフに表現すること」。今までにリリースされたのはオオルリシジミにアオスジアゲハ、ミヤマシロチョウ、ツマベニチョウ、ミヤマカラスアゲハにイシガケチョウ、ギフチョウ、ヤクシマルリシジミ、クモマツマキチョウ、クジャクチョウ、そしてモンキアゲハの11種類。名前を聞いただけでも、その道のプロの選択と唸らせられる。しかもそれぞれの蝶が持つイメージを、見事にマルスの原酒を使って表現しているのだ。
信州も津貫も、仕込みに用いる大麦麦芽のフェノール値は0~50ppmの4段階。酵母もいくつかあり、そして使用する樽、熟成環境も信州、津貫、屋久島と多彩だ。その風味の組み合わせは無限ともいえるバリエーションがあり、だからこそ蝶を重ね合わせて表現したくなるのだろう。「日本にはおおよそ257種類の蝶が棲息している。だから、それらすべてをマルスのモルトで表現してみたい」。そう語る本坊さんの顔は、南さつまの地を駆け回った、在りし日の昆虫少年の顔そのものだった。
ル・パピヨンシリーズの「ミヤマシロチョウ」。 マルス信州蒸溜所の熟成庫にて本坊酒造の本坊和人社長と…。 蝶好きでなくとも知っているアサギマダラは、ル・パピヨンシリーズではなく、蒸留所のビジターセンターをリニューアルした際の記念ボトルとして発売された。アサギマダラは”渡り蝶”と呼ばれる蝶で、その生態調査のために、日時や場所などが羽にマーキングされることで有名だ。 一覧ページに戻る