2021-12-21
アイリッシュ【0192夜】映画で知るアイルランド~その②
「ライアンの娘」(1970 年)は、「アラビアのロレンス」「ドクトル・ジバゴ」で知られる名匠デイビッド・リーン監督が、1916 年当時のアイルランドを舞台に描いた映画で、脚本はロバート・ボルト、そして音楽はモーリス・ジャールが手がけていた。主演はサラ・マイルズ、ロバート・ミッチャム、トレヴァー・ハワードなどで、全編ケリー州のディングル半島で撮影された。
そのためのセットが半島の先端にあるダンキーンの村のはずれに組まれていたが、撮影後も重要な舞台のひとつだった小学校の建物(セット)はそのまま残され、「ライアンの娘」のファンたちの巡礼地となっている。私もNHK・BSの旅番組(1997年)で訪ねたことがあるが、小学校の校庭からは海の向こうにブラスケット島を望むことができた。ブラスケット島は世界的にも有名な島で、今は無人島になっているが、かつてはゲール語(ケルト語)を話す島民が、自給自足に近い生活を送っていた。ブラスケット島の暮らしを紹介する民俗博物館があり、それも興味深いが、近くのディングルの街には2012 年に創業したディングル蒸留所があり、今ではそちらのほうが有名である。
「マイ・レフトフット」(1989 年)は実話をもとに、ダブリンを舞台に描かれた映画で、主演のダニエル・デイ=ルイスが脳性麻痺の青年を見事に演じていた。ルイスといえば王立シェイクスピア劇団出身の二枚目俳優で、当時ロンドンのナショナルシアター(国立劇場)で「ハムレット」などを演じていたが、そのあまりの変わり様、執念とも思えるその演技で、その年のアカデミー主演男優賞を受賞している。私もその舞台を観たが、「マイ・レフトフット」を演じたのが同一人物とは信じ難かった。ちなみにダニエルの父、セシル・デイ=ルイスはイギリスの桂冠詩人で、ダニエルはロンドン生まれだが、のちに先祖の地であるアイルランドに帰化し、現在はアイルランド国籍となっている。
ディングル蒸留所。看板の「DINGLE」の文字の上にある奇妙な(?)シンボルの正体は、『0052 コノートやディングル地方に伝わる奇妙な風習~その②~』をチェック。 撮影に使われた小学校からは、ブラスケット島が一望できる。 一覧ページに戻る