2021-11-18
スコッチ【0179夜】グレンロセスとバイウェイの幽霊~その②
バイウェイことマクロンガー少年が、南アフリカのボーア戦争で孤児となり、それを道端で見つけたメージャー・グラントがローゼスに連れ帰り、小間使いの少年、執事としたことは前ページで述べた。しかし、それがなぜ、グレンロセスの幽霊として現れたのだろうか。気味悪がった職人たちが、ナイトシフトを嫌ったと書いたが、そのことが親会社のハイランドディスティラーズ社にも伝わり、スターリング大学の教授が問題解決のためローゼスにやって来たことは、すでに述べた。その教授(心霊現象の第一人者)は、教えられもしないのに真っすぐバイウェイの墓に向かい、そこでバイウェイと対話したという。教授は、それまでグレンロセスに来たこともなく、ましてやローゼスに黒人がいたことも、バイウェイのことも知らなかった。しかし、蒸留所に着いてすぐに共同墓地に向かい、そこでバイウェイの墓を見つけ跪いたのだ。
教授によると、グレンロセスのスチルハウスが拡張されたことで、バイウェイのスピリチュアルロード、霊の散歩道(とバイウェイは言ったという)が邪魔され、それでスチルハウスに現れるようになったのだという。だからといって、スチルハウスを撤去するわけにはいかない。教授が長いこと跪いていたのは、バイウェイの霊をなぐさめ、散歩のルートを変えてもらう説得をしていたからだという。
最終的にバイウェイは教授の説得に応じ、スピリチュアルロードを変更することに合意。バイウェイの育ったスペイサイドのウイスキー産業が大いに発展することが、地元の人への恩返し、ひいてはメージャー・グラントへの恩返しになるとでも説得したのだろうか。以降、不思議なことにバイウェイの幽霊は現れなくなった。
その経緯を聞いたグレンロセスの職人たちは、「これからは乾杯の際に必ず“トゥーバイウェイ”、バイウェイのためにと言うことを誓います」と約束したのだとか。今でもグレンロセスでは、“トゥーバイウェイ”と、乾杯の前に必ず、そう言うことを守っているのだ。
グレンロセス蒸留所と、そのすぐ隣にあるローゼスの共同墓地。 これがバイウェイの墓。単なる迷信だと片付けてしまってはいけないのだろう…。 一覧ページに戻る