2021-11-16
スコッチ【0177夜】グレンスコシアの幽霊とパブソング
スコッチの蒸留所に幽霊話はつきものだが、経営者が借金苦で海に身を投げ、以来そのユーレイが出ることで有名だったのが、キャンベルタウンのグレンスコシア蒸留所である。しかも、そのことがもとでパブソングまで作られたのだから、スゴイ話である。
グレンスコシアが創業したのは1832年だが、生産が順調だったのは19世紀までで、20世紀に入ると経営が悪化。1928年に生産停止となってしまった、キャンベルタウン自体が衰退し、この頃、相次いで蒸留所が閉鎖し、スプリングバンクを除いては、ほとんどモスボールという状態がその後長いこと続くことになる。グレンスコシアの経営者ダンカン・マッカラムが街の入江であるキャンベルタウンロッホに身を投げたのが1930年で、その後、再開された蒸留所ではダンカンの幽霊がたびたび目撃されるようになったという。
その霊を弔うために(?)作られたのが有名な『キャンベルタウンロッホ』という民謡だ。今ではすっかりパブソングとして、パブでの愛唱歌の1つとなっている。♪キャンベルタウンロッホ、キャンベルタウンロッホ、もしもお前がウイスキーなら、俺は喜んで飲み干すだろう~という、酒飲みの願望を歌ったアップテンポの楽しい歌で、パブで誰かが歌いだせば、たちまち大合唱になること請け合いだ。しかも歌詞の落ちは、「タイム、ジェントルマン!!」という、パブの閉店を知らせる店主の掛け声となっている。つまり、良い気になってウイスキーを飲んで酔っ払っていたら、閉店だから出て行ってくれという合図だったというわけだ。
この歌は英国のパブソング集(そんな物があるのだ)には必ず載っているし、多くのCDにも収録されている。日本では故、C.W.ニコルさんもCDで歌っていて、ライブの十八番(おはこ)になっていた。私もニコルさんのライブは何度か聴いたことがあったが、歌はプロ並み。ニコルさんはウェールズ人で、ウェールズといえば世界一の歌好き。ニコルさんの歌を聴いて、そのことを大いに納得した。
グレンスコシア蒸留所。 キャンベルタウンの街の入り江にあるキャンベルタウンロッホ。 一覧ページに戻る