2021-11-15
その他【0176夜】蒸留所名と異なるブランド名を使う理由とは…
シングルモルトの場合、蒸留所名とブランド名が同じというのが一般的だが、いくつかの例外がある。それがスコッチのグレンガイルとノックドゥー、そしてマクダフ蒸留所などだ。グレンガイルはキャンベルタウンに残る3つの蒸留所のうちの1つで、2005年に79年ぶりに復活オープンした。その時、蒸留所のグレンガイルは他社が商標登録していたため使えず、それで「キルケラン」という名称を採用した。
キルケラン(Kilkerran)はキル・ケアランのことで、これはゲール語で『セント・ケアランの教会』の意味がある。ケアランは地元キャンベルタウン出身の聖人で、キャンベルタウンの旧名も、「ケアンロッホ・キルケアラン」で、ここからキルケランというブランド名が決められた。ラベルに採用されている教会の塔は、このキルケアラン教会である。
ノックドゥーは東ハイランドに1894年に創業した蒸留所で、これも2000年代以降、オーナーが替わってブランド戦略が見直された時に、蒸留所名でなく、「アンノック(anCnoc)」というブランド名が採用された。これはノックドゥーがノッカンドオやカードゥなどと混同されやすいからだったという。マクダフも東ハイランドの蒸留所だが、これもシングルモルトは蒸留所名とは異なる「グレンデブロン」を昔から採用してきた。ちなみにノックドゥーも、マクダフもボトラーズからは蒸留所名のノックドゥー、マクダフという名前で製品が出ている。
上の3つはスコッチのケースだが、アイリッシュでも最近ロイヤルオーク蒸留所が、自社製品に「バスカー」という名前を付けてリリースした。もっともこれはシングルモルトではなく、ポットスチルウイスキーとモルトウイスキー、そしてグレーンウイスキーをブレンドした、アイリッシュブレンデッドだった。それもすべてロイヤルオーク蒸留所産の原酒で、そういう意味ではシングルブレンデッドのアイリッシュである。原酒が多彩で、これからいろんな製品の可能性が考えられるので、これはあえてロイヤルオークとは名乗らなかったのだろう。
グレンガイル蒸留所。2004年にキャンベルタウンの呼称を残すために、79年ぶりに復活した蒸留所だ。 グレンガイル蒸留所がリリースしているキルケラン。 一覧ページに戻る