2021-11-09
ワールド【0173夜】中国雲南省ペー族の里にディアジオが新しい蒸留所を建設
先日ディアジオ社が中国の雲南省に新しいモルトウイスキー蒸留所を建設するとアナウンスした。もちろんディアジオ社が、イギリス、アイルランド、アメリカ、カナダ以外に蒸留所をつくるのは初めてのことで、そもそも中国に国際的な蒸留所ができるのも初めてである。そういえば9月にディアジオが日本の嘉之助蒸留所と提携をするという仰天ニュースが流れたばかり。ディアジオ社の世界戦略の、これも一貫だろうか。
新しい蒸留所は雲南省の洱源県(じげんけん、中国読みではアルユェン)に建てられる予定で、敷地面積は6万6,000平方メートル、約2万坪で、標高は2,100メートルだという。総工費85億円という巨大プロジェクトで、カーボンニュートラル、脱炭素の環境循環型での最新鋭の蒸留所だ。生産の細かいスペックはまだ公表されていないが、これは巨大な中国マーケットを見据えた将来投資である。
洱源県は大理ペー族自治州の中にある県で、近くにはアルハイ湖(洱海)という有名な湖と、ペー族自治州の中心地である大理市がある。アルハイは湖面の標高が1,972メートルあり、中国では7番目に大きな湖だという。面積は249平方キロメートルで、これは日本の琵琶湖(669㎢)の半分以下だが、周囲を山々に囲まれた美しい湖として、古来より有名であった。
ペー族は中国の少数民族で、大理はその中心地。漢族とは異なるペー語を話し、ペー語はビルマ・チベット語族に属する言葉で、もともとは隣接するチベット族の一派と見られている。漢字では白族で、女性が頭に大きな被り物をするのが特徴。その帽子に白い羽根飾りをつけることから、そう呼ばれたという説がある。13世紀には元朝の初代皇帝クビライの庶子であるフゲチが同地を支配し、雲南王国をつくっていたが、明の時代以降は中原の支配を受け、今日に至っている。現在では人口の6割が漢民族で、ペー族は2割程度だという。そんなペー族の地に誕生するディアジオの蒸留所は、どんな蒸留所になるのだろうか。今から楽しみである。
中国にディアジオ初のウイスキー蒸留所、23年完成目指す-85億円投資 洱海の風景は、インターネットで検索すると風光明媚な画像が数多くヒットする。雲南省は昔は南蛮といわれた中国の外れにある地域だが、近年は省都の昆明を起点に、東南アジア諸国を結ぶ高速道路の整備が進んでいる。これもディアジオ社が雲南省を選んだ理由の一つだろうか…。 一覧ページに戻る