2021-11-06
アイリッシュ【0172夜】U2のボノも登場するダブリンのバスカー
アイルランド南東部、カーロウ州にあるロイヤルオーク蒸留所がオープンしたのは2016年のこと。当初は創業者のバーナード・ウォルシュ氏の名前をとってウォルシュ蒸留所と名乗っていたが、2019年にイタリアの会社が全株式を取得し、蒸留所名をウォルシュからロイヤルオークに改めた。もともと、蒸留所が建てられている場所が、ロイヤルオークと呼ばれていたからだ。
ロイヤルオークが造るのは2回蒸留のモルトウイスキーと3回蒸留のポットスチルウイスキー、そして3塔のコラムスチル(連続式)で蒸留するグレーンウイスキーの3種類。そのための3基のポットスチルと、1セットの連続式蒸留機が1つ屋根の下に納まっている。近年アイルランドに40近いクラフト蒸留所がオープンしているが、ポットスチルとコラムスチルが1つ屋根の下に納まっているのは、ロイヤルオークが初めて。いや世界でも、ここだけかもしれない。
仕込みはワンバッチ3トン(モルトとポットスチルウイスキー)で、使用する樽はバーボン、シェリー、そしてマルサラの3種類。マルサラはイタリアで造られる酒精強化ワインで、いかにもイタリアの会社らしい。その3種のウイスキーと3種の樽を使った原酒をブレンドしたのが「バスカー」で、2020年に発売され、日本でもこの秋から正式に販売となっている。これはモルトウイスキー、ポットスチルウイスキー、グレーンをブレンドしたアイリッシュブレンドで、すべて1つの蒸留所で造られていることから、“シングルブレンデッド”と呼ばれる。これもアイリッシュ初の快挙だ。
ちなみにバスカーとは『大道芸人』のことだが、アイルランドではストリートミュージシャンのことをいう。ダブリンのグラフトンストリートがもっとも有名だが、西部のゴールウェイ、そして北アイルランドのベルファストもバスカーで知られている。クリスマスイブには、なんと毎年U2のボノがダブリンの路上でバスキングをするという。投げ銭はすべてチャリティーだというが、さすがボノ、さすがダブリンである。
こちらが”シングルブレンデッド”のバスカー。TWSCでも、アイリッシュウイスキーの出品エントリー数は年々増えており、今後楽しみなカテゴリーの1つだ。 一覧ページに戻る