2021-11-05
アイリッシュ【0171夜】樽の再活生、NEOCとは
先日アイルランド大使公邸でアイリッシュウイスキーのオンラインテイスティングセミナーをやっていた。アイリッシュのクラフト蒸留所特集で、クロナキルティとスリーブリーグ、そしてティーリング蒸留所の合計6アイテムのテイスティングだった。それぞれが実に興味深いアイテムだったが、そのうちの1つ、クロナキルティのダブルオークが面白かった。
クロナキルティはアイルランド南部のクロナキルティに2019年にオープンした蒸留所で、この『千夜一夜』でも以前に紹介している(0106)。生産開始からまだ3年未満なので、自社製原酒は使えない。そのため、他社から10年熟成のグレーン原酒と4年熟成のモルト原酒を買ってきて、それを独自にブレンド。その後、アメリカンホワイトオークの新樽と、ボルドー産の赤ワイン樽の2種を使って3~6ヵ月間後熟を施したものだ。2種の樽を使うことからダブルオークだが、このボルドー産赤ワイン樽はNEOCと呼ぶ樽だと明記されている。
あまり聞いたことがない樽だと思ったら、「New Era of Cask」の略で、赤ワイン樽をシェービングして、トースト、その上でリチャーした樽のことだという。つまり、スコッチや最近ではカバラン(台湾)、インドのポールジョンなどでも使っているSTR樽のことを、アイリッシュでは、そう言うのだろう。STRは主にワイン樽の再活生法で、一度赤ワインなどを熟成させていた樽(主にフレンチオーク)の内側を金属製のタワシを使って削り、そのうえでトースト、さらにリチャーを施した樽のことをいう。それをアイルランド風に言い直したのが、このNEOCなのだろう。やはりフレンチオークだという。カバランのヴィーニョバリックは2020年度の「東京ウイスキー&スピリッツコンペティション」で、ベスト・オブ・ザ・ベスト、シングルモルトの頂点に輝いたが、その樽がポルトガルの赤ワイン樽をSTR処理した樽だった。それが今、世界の樽のトレンドのひとつとなっているのかもしれない。
クロナキルティのダブルオークは、「東京ウイスキー&スピリッツコンペティション(TWSC)2021」で銀賞に輝いている。