2021-11-04
スコッチ【0170夜】南極で発見された100年前のウイスキー~その④
このレプリカボトルは第1弾も第2弾も、ネックラベルのところに『エンデュアランス号』という表記を入れている。エンデュアランス号は1914年から16年にかけて行われた、シャクルトンの3回目の南極探検で正式登録された船で、2回目の探検の時はニムルッド号というのが正式記録である。ニムルッド号は1860年代に建造されたアザラシ猟用の小さな船で、主にカナダのニューファンドランド島周辺で活躍していた。一応極地仕様にはなっていたが、シャクルトンは船体にしみこんでいるアザラシの脂の匂いに閉口したという。そこで南極探検にふさわしいようにと、ニムルッドから『エンデュアランス号』と改名することに決めたのだ。
エンデュアランスとは「忍耐」という意味で、シャクルトン家のモットーである「バイ・エンデュアランス・ウィ・コンクァー(By endurance we conquer)」、“忍耐をもって征服する”ということにちなんでいる。船名はそこから選ばれた。ところが出発準備の慌ただしさと、ドックでの船の修繕に時間がかかってしまい、船名変更の書類が間に合わなかった。しかしマッキンレー社に発注した1906年の書類にはエンデュアランスとなっていたため、そのままネックラベルには「SHIP ENDUARANCE」というラベルが貼られてしまったのだという。あるいはアザラシの強烈な匂いに耐えるには忍耐しかないと、シャクルトンは思ったのかもしれない。
このエンデュアランス号(旧ニムルッド号)は1914年の南極探検の際にも使用され、この時シャクルトン隊はワッデル海で氷に閉じ込められ、2年間の漂流という困難な旅を強いられた。しかし、一人の犠牲者を出すこともなく、シャクルトン隊28名は無事故国に帰還することができた。それが可能だったのは、シャクルトンの隊長としての卓越したリーダーシップがあったからで、欧米のビジネススクールでは企業のリーダー論として、シャクルトンのこの時の旅の記録と伝記が、必須アイテムとなっているという。つまり、リーダーとはどうあるべきかを、シャクルトンから学ぼうということだ。どこかの国のリーダーにも聞かせたい…。
レプリカボトル第1弾。"ENDUARANCE"の文字が確認できる。 一覧ページに戻る