2021-10-28
スコッチ【0166夜】ブレンデッドスコッチのブランド名について~その②
しかし、バーンズ以上にブランド名として使われることが多いのが、ウォルター・スコットだ。スコットはスコットランドが生んだ3大文学者の1人で、あとの2人はロバート・バーンズと、そして『宝島』や『ジキル博士とハイド氏』などで知られる、ロバート・ルイス・スチーブンソンだ。エジンバラに行くと、旧市街の一角に“ライターズミュージアム”というのがあって、そこでは3人の作家ゆかりの物や、足跡をたどることができるようになっている。
ウォルター・スコットはのちに貴族に叙せられ、サー・ウォルター・スコットという言い方のほうが一般的だが、スコットランド文芸復興の立役者で、作品以外でも数々の業績を残している。ウイスキーにとっても重要人物の1人で、1822年のジョージ4世のエジンバラ行幸を演出したのは、スコットだったといわれている。ブリタニア号でエジンバラの外港リースに下り立ったジョージ4世が、「私にスミスのグレンリベットを持ってこい」と言ったのは有名な話だ。それを言わせたのがスコットで、これを契機に酒税法改正の機運がいっきに高まり、翌23年に酒税法が改正され、100年以上続いた「密造酒時代」に終止符が打たれた。それを受け、1824年にスミスのグレンリベット蒸留所が、政府公認第1号蒸留所になったことは、ウイスキーファンなら誰もが知っているだろう。つまり、スコットがいなかったら、もう少し密造酒時代は長く続いていたかもしれないのだ。
そのスコットの有名な作品が『ウェイバリー』や『湖上の美人』、そして『ロブロイ』などで、ロブロイはウイスキーのブランド名にもなっているし、映画にもなっている。『ウェイバリー』に登場する架空の人物、ベイリー・ニコル・ジャーヴィはやはりブレンデッドのブランド名に採用されているし、『アンティクァリー(好古家)』という小説も、そのまま『ジ・アンティクァリー』というブランド名に採用されている。
日本でいえば、日本酒や焼酎に『坊ちゃん』や『三四郎』、『草枕』、『こころ』と付けるようなものだろうか…。
昔のアンティクァリーのラベルには、小説『アンティクァリー(好古家)』で使われていた絵があしらわれていた。 『ブレンデッドウィスキー大全』でも取り上げた、現在のアンティクァリーのラベル。 一覧ページに戻る