2021-10-04
ジャパニーズ【0162夜】描きかえられた真鯛の姿…
以前、明石酒類醸造と「東経135度線」というジンについて紹介したことがあるが(0110)、今ガロアでジャパニーズ特集をやっていて、先日、社長の米澤さんにZoomを使って改めてインタビューした。その時に詳しく海峡蒸溜所と、日本酒の「明石鯛」について聞くことができた。
明石酒類はもともと甲類焼酎やみりん、普通酒の清酒などを造る会社で、戦前は醸造アルコールを造るアロスパス式の連続式蒸留機があり、これで工業用アルコールなども造っていたという。当時近くに川崎重工業の工場があり、そこで戦闘機や、その燃料などを作っていたというから、その原材料となるアルコールを供給していたのだろう。つまりゼロ戦の燃料にもなっていたわけで、そのため1945年の空爆で、明石酒類も爆撃にあったという。
それはさておき、明石といえば鯛であり、鯛の絵が描かれた「明石鯛」は、地元ではそれなりに人気があったが、全国区の酒とはならなかった。そこで米澤さんは海外に販路を求めるべくイギリスに行ったが、そこで運命的な出会いを果たすことになる。高級ホテルや一流レストランに酒をおろしていたインポーターが、明石鯛を輸入したいと申し出たことだ。明石酒類としては願ってもないことで、おかげでイギリスで日本酒といえば明石鯛といわれるまでに人気となった。ただ、この時につけられた注文が、鯛の絵をもっとそれらしく描いてくれというものだったという。
鯛はメデタイということで、明石では少し漫画チックに描かれていたが、もっとリアルに描けという注文だった。それで採用されたのが、現在の絵柄である。日本人から見ると、やや違和感があるが、そもそもイギリス近海に鯛はいない。英語では鯛のことをシーブリームと言ったりするが、それはどちらかというと黒鯛のほうで、真鯛はレッドシーブリームで、一般のイギリス人はほとんど見たことはないだろう。一般の人はどれが鯛なのか、ほとんど知らないのだ。
明石鯛のラベル。 こちらは正真正銘本物の明石鯛。 一覧ページに戻る