2021-09-08
スコッチ【0154夜】キャンベルタウンという名前が消える!?
スコッチの生産地区分は古くはハイランド、ローランド、アイラ、キャンベルタウンの4つに分類されてきた。今ではそれにスペイサイド、アイランズを加えて6地区とするのが一般的だが、1990年代後半から2000年代初めにかけ、キャンベルタウンを生産地区分から外すという動きが生じた。スコッチウイスキー協会、通称SWAが言い出したことで、理由はキャンベルタウンには2つの蒸留所しかなく、生産地呼称の要件を満たしていないということだった。それに猛烈に異を唱えたのが、スプリングバンク蒸留所のオーナーであるミッチェル家のヘドレー・ライト氏だった。
氏の言い分はこうだ。「2つで足りないというなら、3つに増やすまで。ローランドにはオーヘントッシャンとグレンキンチ―、ブラッドノックの3つしかないが、そのローランドを残してキャンベルタウンを廃止するというなら、俺がキャンベルタウンにもう1つ蒸留所をオープンする」。そのライト氏の言葉どおり、2004年にオープンしたのが、キャンベルタウン第3の蒸留所となるグレンガイル蒸留所だった。もともとこの蒸留所は1872年に創業した古い蒸留所で、創業者はライト氏の先祖にあたる人物。1926年の閉鎖以来、持ち主は転々としたが建物は残っていた。それをミッチェル家が買い取り2004年に再オープンした。ただし蒸留設備は何も残っていなかったので、すべて新しく導入した。スチルだけはインバーゴードンのベンウィヴィス蒸留所の中古を買ってきたが、それ以外は新調である。ベンウィヴィスのスチルにこだわったのは、当時バンクの所長を務めていたフランク・マクハーディ氏が、若い時勤めていた蒸留所だったからだ。
生産はスプリングバンクの職人たちが兼務していて、9月から12月の4ヵ月くらいしか操業していないが、全世界にファンがいる。グレンガイルというブランド名は他社が持っているため、シングルモルトはキルケランという名前で出ている。それにしても、グレンガイルの復活がなければキャンベルタウンモルトという名前が消えていたとは…。
スコットランドの西側、キンタイア半島の先端にあるグレンガイル蒸留所。キャンベルタウンは、かつてスコットランドのウイスキー造りの中心地だった。 グレンガイルのポットスチル。 一覧ページに戻る