2021-09-01
スコッチ【0151夜】煙突で有名な町がある…
スコットランドでは、どこの町でも集合住宅の屋根の上には煙突が並んでいる。その煙突の本数はその家の暖炉、集合住宅なら部屋の数を表しているが、その煙突にいろいろな意匠を凝らしていることで有名なのが、パースの町である。
パースはエジンバラ北方50㎞のところにある古くからの都市で、11~14世紀頃まではスコットランドの首都でもあったところ。町の中心をテイ川が流れ、町はその右岸沿いに発展してきた。パースの人口は約4万4,000人で、今では観光都市としても有名だが、古くから商業、特にウイスキー産業で栄え、デュワーズをはじめ、フェイマスグラウスで有名なマシュー・グローブ社なども、このパースに本拠を構えていた。そのパースを有名にしているのが、ウイスキーではなく意匠を凝らした煙突群。他の都市では、どこも同じような煙突が林立しているのに、パースはどういう訳か、それぞれ工夫を凝らし、他とは違うデザインを競ってきた。まるでこれも日本のウダツのような話だが、こんな都市はどこを探しても見当たらない。SNSではパースの煙突だけを写真で紹介したサイトもあるくらいだ。もちろん今は、かつてのように暖炉で石炭や薪を燃やすことはほとんどなくなったが、煙突に意匠を凝らすという伝統は健在のようだ。
そのパースの煙突をラベルにあしらったのが、モリソン・マッカイ社がリリースしている「オールドパース」という、ブレンデッドモルトである。かつては純粋なブレンデッドだったが、同社がブランド権を手に入れてからは、ブレンデッドモルトとしてシリーズ化し、いくつかの種類をリリースしている。知らない人が見たら、なぜラベルに煙突が描かれているのと思うが、パースという地名を聞いただけで、スコットランド人は煙突を連想するのだという。現在、ここが造っているのがアベラルギ―というシングルモルトで、パース南郊に2017年に蒸留所が竣工している。まだ正式なシングルモルトは販売されていないが、「オールドパース」同様、楽しみなウイスキーだ。
「オールドパース」のボトル。 一覧ページに戻る