2021-08-23
スコッチ【0145夜】インド人はピートがお好き…
タムナヴーリン蒸留所がスペイサイドの山奥に創業したのは1966年のこと。創業者はインバ―ゴードン社だったが、その後同社はホワイトマッカイ社に買収されてしまった。しかしホワイトマッカイそのものが経営難に陥り、所有者はその後転々。それに伴ってタムナヴーリンも1998年を最後に12年間生産停止を余儀なくされた。生産が再開されたのは、インドのユナイテッドスピリッツ社が、ホワイトマッカイを買った2007年以降のことで、その直後からノンピート麦芽だけでなく、フェノール値55ppmのヘビリーピーテッド麦芽の仕込みも行っている。ただし量は限られていて、年間3~4週間のみだったという。
実は『完全版シングルモルトスコッチ大全』(2021年5月刊、小学館)を書く時に参考にした『Malt Whisky Year Book 2021』では、そのピート麦芽の仕込みは2010年から2013年までと記されていたが、その時期がもう少し早かったのではないかと、最近気が付いた。それはウイ分研がオリジナルで詰めたタムナヴーリンの2009年蒸留のカスクが、スモーキーでピーティだったからだ。イヤーブックが参考にした資料が間違っていたのか、蒸留所側が出したデータが間違っていたのか。考えてみれば、タムナヴーリンが通常はやらないヘビリーピーテッド麦芽の仕込みを行ったのは、オーナーが替わったのが理由で、だとすれば2008年くらいからやっていてもおかしくない。その後タムナヴーリンは2014年に再び売却され、現在はフィリピンのエンペラドール社の所有となっている。したがってタムナヴーリンのピート麦芽の仕込みは、インド企業がオーナーだったわずかな時期だけに限られるということになる。
その貴重なタムナヴーリンのヘビリーピーテッドは、ウイ文研の“グラバーコレクション”の1本となって、この9月に登場する。じつは、これがコレクションの№1で、ラベルには日本近海の磯に棲息するコブダイを使っている。珍しいタムナヴーリンのヘビリーピーテッド、ぜひ、お試しあれ。
タムナヴーリンのヘビリーピーテッドは9月に発売。気付けばサマーセールも残り一週間。気になるボトルがある方はこの機会をお見逃しなく。