2021-08-20
アイリッシュ【0143夜】“猫印ウイスキー”の復活!?
アイリッシュウイスキー復興の立役者となったジョン・ティーリング氏と、グレートノーザン蒸留所については0142で紹介したが、実はこのグレートノーザンは19世紀に創業したビールの醸造所だったところ。その後ギネスグループが買収し、ラガービールの「ハープ」を造る工場として大幅に拡張していた。アイルランドというとギネスで、黒ビール以外はほとんど飲まれていないのかと思ったら、近年、世界的なライト志向、ドライ志向で人気が急上昇したのが、ギネスのハープだった。ハープは小型のアイリッシュハープのことで、これはアイルランドの象徴、ギネスの商標の1つともなっている。
実はギネスはダブリンの本社工場以外に1970年代から80年代にかけ、北のグレートノーザンと、南のウォーターフォードの2つのビール醸造場を持っていたが、90年代後半から2010年代にかけて、すべてダブリンの本社工場に集約させることを決め、両者とも売却を発表。それを買ったのがグレートノーザンのティーリング氏と、ウォーターフォードのマーク・レイニエー氏だった。どちらも、今はウイスキー蒸留所に改造されている。当初グレートノーザンはフリッリ社のコラムスチルを入れ、グレーンウイスキーのみを生産する予定でいたが、グレートノーザンにはビール用の巨大な銅製煮沸釜が3基ある。そこで考えたのが、このケトルと呼ぶ銅釜をポットスチルに改造できないかということだった。
ジョン・ティーリングさんによると、それのほうが新しいスチルを買うより高くついたということだったが、2018年以降はグレーンウイスキーだけでなく、そのスチルを使ったモルトウイスキーも、ポットスチルウイスキーも造っている。さらに自社のブランドは持たないと言っていたが、ひとつだけ復活させたブランドがあり、それがバークスだった。ラベルの上部に猫が描かれたアイリッシュブレンデッドで、かつて日本にも輸入されていたことがある(猫印ウイスキー?)。おそらくこのバークスには自社のグレーンとモルトが使われていると思うのだが…。
ビール用の煮沸釜を改造した3基のスチル。これでモルトウイスキーとグレーンウイスキーを造っている。 ギネス社の巨大なビール工場を改造したグレートノーザン蒸留所。 一覧ページに戻る