2021-08-13
アイリッシュ【0142夜】グレートノーザンのグレーンウイスキー
先日あるところから頼まれて、グレートノーザン蒸留所のグレーンの3年物の、サンプルをテイスティングする機会があった。度数は43%で、ブレンド用のサンプル原酒かと思われるが、とても3年物とは思えないくらい美味しくて、バランスも優れていた。
グレートノーザンはクーリー蒸留所を創業したジョン・ティーリングさんが、2015年に立ち上げた蒸留所で、グレーンウイスキーを他社に供給するのが、その目的だった。アイリッシュのこのところの勢いは凄まじいものがあるが、多くのクラフト、新規蒸留所にとって一番困っているのが、ブレンド用のグレーンウイスキーが買えないということだった。もちろん自社のシングルモルト、シングルポットスチルをボトリングするという手もある。しかし、そのためには3年待たなければいけない。それまでのキャッシュフローとして、多くのクラフトでは他社の原酒を買ってきて、それを独自にブレンドしたり、あるいはシングルモルトとして出してきたが、グレーンが手に入らないとブレンデッドがつくれない。グレーンを造っているのはミドルトンとクーリーしかないからだ。ミドルトンはペルノリカールで、クーリーは現在ビームサントリーの所有になっている。どちらも大企業で、しかも自社ブランド用に確保するのが精一杯で、他社に売る余裕はない。そこで、立ち上がったのが、ジョン・ティーリングさんだった。
クーリーをビームに売った資金を元に、ダンダークにあったギネスのビール工場を買い取り、そこにイタリアのフリッリ社製の連続式蒸留機を導入し、2015年からグレーンウイスキーを造り始めたのだ。もちろん自社ブランドは一切出すつもりはなく、すべて他社に供給する目的だった。ただ、当初は予定になかったモルトウイスキーの生産も始めることができ、今はごく少量だが自社ブランドの製品も出すことができるようになっている。改めてグレートノーザンのグレーンのテイスティングをしてみて、ぜひこれをシングルグレーンで販売してほしいと思ったのだが。
グレートノーザン蒸留所のスチル。 こちらがテイスティングを頼まれたグレートノーザンのグレーンウイスキー。 一覧ページに戻る