2021-08-11
スコッチ【0140夜】サンスクリットにゲルマン、ヘブライ語とは…
以前、アナンデール蒸留所のところで、「言葉の人」と「剣の人」というブランド名を紹介したが、どこも新しいブランドのネーミングには苦労(?)しているようで、難解・珍妙・こじつけ・ハテナマークのものも多い。アナンデールは南スコットランド・ダムフリースシャーの蒸留所だったが、同じダムフリースのウィグタウンにあるのが、ブラッドノック蒸留所で、ここはかつてベルの原酒蒸留所として“花と動物シリーズ”のボトルでも知られた蒸留所だ。ラベルに描かれていたのは、ウィグタウン周辺で見られる野生のランの花だったが、その後すぐに閉鎖され、2015年にオーストラリア人のデイビッド・プライヤー氏が買収するまで、不運な時代が続いていた。
デイビッド氏が勝った時、生産設備は老朽化が激しかったため、モルトミル(麦芽粉砕機)を除いてすべて最新のものに入れ替えた。そういう意味では、まったく新しい蒸留所と言えるかもしれない。2016年の再操業以来、生産は順調に続けられているが、現在一般にリリースされているボトルは、昔のストックを使った製品で、その製品のネーミングが、とにかく変わっているのだ。定番として出している3種類のボトルのうち、ノンエイジのものが「サムサラ」、15年物が「アデラ」、そして25~27年物が「タリア」と名付けられている。サムサラはインドのサンスクリット語で“再生”、アデラは古代ゲルマン語で“気品”、そしてタリアはヘブライ語で“天からの優しい水”の意味だとか。
インドの蒸留所がサンスクリット語を使うのは分かるが(例えばアムルットはサンスクリット語で“人生の霊酒”の意)、スコットランドの蒸留所がサンスクリット語というのも…。ましてや古代ゲルマン語、ヘブライ語にいたっては、チンプンカンプン。デイビッドさんはオーストラリア人で、オーガニックのヨーグルトなどを製造販売して財を成した人物だが、世界の古代言語に造詣・興味が深いのかもしれない。それにしても意味も発音も分からないと…。
ブラッドノック蒸留所。 ブラッドノックのポットスチル。製品のネーミングに関して言えば、日本の焼酎業界でも個性的な名前の製品が多い。TWSC2021焼酎部門の受賞ボトルを見ていると、ついつい名前の由来に迫りたくなるようなボトルがいくつもある。 一覧ページに戻る