2021-07-26
ワールド【0129夜】インド最高峰の名前が付けられた新しいシングルモルト
インディアンウイスキーのシングルモルトというと、カルナータカ州のバンガロールにあるアムルットと、アラビア海に面したゴアのポールジョン蒸留所の2つが有名だが、そこにもうひとつカメットという蒸留所が加わった。北部のクルクシェートラ州にある蒸留所で、カメット(Kamet)とは、インディアンヒマラヤにある標高7,756メートルの山のこと。インド・ヒマラヤにある山としては、これが最高峰という。
シンボルマークは、いかにもインドらしい装飾にあふれたパロット(オウム)で、地域の守り神だという。もともとオウムは聖なる鳥で、未来を告げる預言者でもある。インディアンシングルモルトの特徴は、アムルットもポールジョンもそうだが、原料にスコッチやアイリッシュ、ジャパニーズで一般的な二条大麦の麦芽ではなく、インド産の六条大麦の麦芽を使うこと。六条大麦は二条に比べてタンパク質が多く、デンプンが少ないためアルコール収量(1トンの麦芽から最終的にどれくらいの100%アルコールが取れるかという数値)は落ちるが、タンパク質が多い分、酵素力が強く、糖化が効率的に行えるという。さらにハスク(外殻)も厚く、これが天然のフィルターの役目をはたすため、より清澄麦汁が取れるなど、メリットも多い。タンパク質が分解してできるアミノ酸が多いことから、独特のうま味成分もある。実は北インドのヒマラヤ山麓は世界でも有数の六条大麦の産地で、それもあってインディアンシングルモルトは、どこもこの六条大麦を使うのだ。
カメット蒸留所(親会社はピカデリーディスティラリー)のマスターディスティラーは、アムルットのマスターディスティラーだった、スリンダー・クマールさん。私もアムルットでお会いしたことがあるが、アムルットを世界的なインディアンシングルモルトに育て上げた立役者でもある。そのクマールさんが北インドに移って、手掛けるのが、このカメットなのだ。
地域の守り神パロットをラベルにあしらったカメットのシングルモルト。 一覧ページに戻る