2021-07-06
スコッチ【0121夜】オリジナル版画の謎解き⑥~ブルックラディ、キルホーマン編
アイラの蒸留所と版画、そのトートバッグの謎解きの最終回。今回はブルックラディとキルホーマンだ。ブルックラディと組み合わせたのは眼の前のインダール湾を泳ぐイルカである。インダール湾(ロッホインダール)は、アイラ島西岸にある大きな入江だが、この湾ではイルカや、時にシャチなどの姿を見ることができるという。それも東側のボウモアではなく、西側のブルックラディの近辺でよく見かけられるという話だ。私も一度だけ見たことがあるが、島民によればそれほど珍しいことではないという。ちなみにインダール湾の奥がブリッジエンドで、ここの干潟では多くの水鳥が群れている。年中見られるのが、オイスターキャッチャー、都鳥で、これをシンボルにとも思ったが、すでにスプリングバンクで使ってしまっていた。それで、イルカにしたという訳だ。実は北ハイランドのティーニニック蒸留所は、今でも“花と動物シリーズ”のボトルで知られ、そのラベルに描かれているのが、クロマティ―湾を泳ぐイルカの姿である。
キルホーマンは2005年に創業した、アイラでは新しい蒸留所だが、蒸留所の近くには有名なケルト十字があるので、それをシンボルとした。かつてこの辺はアイラ島の領主、アンガス・オグが夏の離宮を置いたところといわれ、その近くに建てられたのが、このケルト十字だ。建てられたのはアンガス・オグの時代の14~15世紀。それ以前のケルト十字は円環の付いたものが一般的だったが、どういう訳か14~15世紀には、このような十字架が築かれた。これはキンタイア半島の先端にあるキャンベルタウンのハイクロスに非常によく似ていて、アーガイル地方でよく見かけるスタイルかもしれない。もともとアーガイル地方を治めていたサマーレッドの子孫がアイラ島のアンガス・モー、アンガス・オグ親子で、アイラ島はその後もアーガイル公キャンベルの支配を長く受けている。もともと同地とは密接な関係があるのだ。
ブルックラディ蒸留所。 インダール湾を泳ぐイルカとコラボしたブルックラディ蒸留所をモチーフにしたウイ文研オリジナル版画。 キルホーマン蒸留所。 ケルト十字とコラボしたキルホーマン蒸留所をモチーフにしたウイ文研オリジナル版画。ケルト十字については、「0061 アイルランドを象徴するケルト十字とラウンドタワー」で紹介している。 一覧ページに戻る