2021-07-05
アイリッシュ【0120夜】オリジナル版画の謎解き⑤ ~ブッシュミルズ、ミドルトン編
ウイスキー文化研究所のオリジナル版画と、それをあしらったトートバッグは人気だが、その図柄はどうして決めたのかと、よく聞かれる。スコッチについては、すでにいくつかその謎解きを書いているが、今回はアイリッシュの2種。
北のブッシュミルズと組み合わせているのは、世界遺産にも登録されているジャイアントコーズウェイという、自然景勝地。溶岩が地上に吹き出し、急速に冷やされ六角柱に固まったもので、ブッシュミルズ蒸留所近くの海岸に存在する。多くの観光客が訪れる人気のスポットだが、ジャイアントコーズウェイ、「巨人の通り道」と呼ばれるのは、アイルランドの伝説上の巨人が、実際にそれを階段がわりにして海におりて行ったと伝えられているからだ。まるで『進撃の巨人』みたいな話(?)だが、傍まで行ってみると、その奇観に驚く。国は違うが、スコットランドの有名なフィンガルの洞窟も同じような六角柱の玄武岩があり、ヘブリディーズ随一の奇観として知られている。
ミドルトンは南のコーク市近郊にある蒸留所で、現在ここはジェムソンのヘリテージセンターになっている。しかし、ここを有名にしているのは、容量15万リットルという、世界一巨大なスチルがあることだ。もちろん今は現役ではないが、1975年まで石炭直火が行われていたというからスゴイ。なので、それをシンボルとしてあしらってもよかったのだが、外庭にも別のスチルが展示してあるので、ここは乳牛を採用することにした。
実はミドルトンがあるコーク州から隣のケリー州一帯は一大農業地区で、大麦や小麦の栽培も盛んだが、もう1つ、優秀な牧草の産地でもあることから酪農も盛んだった。ここで取れる牛乳からつくられたのがバターで、ケリー州のバターは「ケリーゴールド」と呼ばれ、世界一おいしいバターと評判だったという。ごく普通のホルスタインだが、ケリーゴールドに敬意を表し、それをあしらうことにしたのだ。
ブッシュミルズ蒸留所の近く、「巨人の通り道」と呼ばれるジャイアントコーズウェイ。 そのジャイアントコーズウェイとコラボしたブッシュミルズ蒸留所をモチーフにしたウイ文研オリジナル版画。 世界一巨大なスチルが目を引くミドルトン蒸留所。 乳牛とコラボしたミドルトン蒸留所をモチーフにしたウイ文研オリジナル版画。 一覧ページに戻る